2023 Fiscal Year Research-status Report
官僚機構の発達過程:クライエンテリズムと弱い国家の罠
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23K01446
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
水野 伸宏 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (60584505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡澤 亮介 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (30707998)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 弱い国家 / 官僚機構 / クライエンテリズム / 民主化 |
Outline of Annual Research Achievements |
国家が十分な統治能力を持つことは経済発展に欠かせず、多くの途上国では「弱い国家」と呼ばれる統治能力の欠如が貧困を招いている。本研究は、国家の統治において中心的な役割を果たす官僚機構の発達過程を理論的に分析している。特に既存のデータ・事例が示す2つの実証的事実、①国家の統治能力や官僚機構の質の発達過程には持続性があること、および、②官僚機構の成熟に先立つ民主化は官僚機構の発達を阻害し得ることを理論的に説明することを試みている。質の高い官僚機構の発達には、能力主義の確立が重要となるが、しばしば政治家は選挙での得票のために、公職を投票の見返りに支持者に配分している(クライエンテリズム)。本研究はこれまでに、クライエンテリズムの発生を内生的に説明しつつ、官僚機構の動学的な発展プロセスを描写する複数定常モデルを構築し①官僚機構の発達が初期条件に依存し、当初官僚機構の質が低い社会ではクライエンテリズムが蔓延し官僚機構の発達が阻害される「弱い国家の罠」が存在する事、および、②早期の民主化が社会を弱い国家の罠に至る経路に乗せ得ることを示すことができている。この研究成果は"A Dynamic Theory on Clientelism and Bureaucratic Development"としてWorking paperとして公開している。また研究成果を日本経済学会およびEuropean Public Choice Societyにおいて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の分析パートはほぼ完成し、学術誌に論文投稿する段階に入っており、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
論文を学術誌に投稿し、査読過程において要求される追加的な分析を行うことになる。
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Causes of Carryover |
当初は2023年度3月にアメリカにおいて例年開催されるPublic Choice Societyでの学会報告を予定していたが、2024年度4月上旬にヨーロッパで開催されるEuropean Public Choice Societyでの報告に変更したため、2023年度は旅費の使用が大幅に減少した。また、研究が当初想定していたよりも順調に進んだため使用する物品費も減少した。
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Research Products
(2 results)