2023 Fiscal Year Research-status Report
株式デュレーションを用いた日本の株式市場の実証分析
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23K01451
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山根 明子 広島大学, 人間社会科学研究科(社)東千田, 准教授 (60580173)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ファイナンス / 株式リターンのクロスセクション / 株式デュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には、まず、関連分野の先行研究のサーベイを行った。株式タームストラクチャーに関する先行研究の分析結果は、本研究課題で想定している結果と整合的なものが多いものの、一部の先行研究については非整合的な結果が得られており、注意が必要であることが分かった。株式デュレーションの計測方法についても、近年の先行研究では複数の手法が提案されていることが明らかになった。 次に、株式デュレーションを日本市場の個別銘柄について計測し、株式デュレーションの大きさで分類された5分位ポートフォリオを作成した。株式デュレーションの計測方法については、いくつかの方法を試みた結果、先行研究で提案されたもののうち最も単純なものを採用している。研究の方向性を探るための予備的な分析として、先行研究が米国市場に対して示したことが日本市場にも適用可能かどうかを確認した。その結果、日本市場に対しても概ね類似した現象が観察されている。さらに、1990年以降のデュレーション5分位ポートフォリオのリスク調整済リターンの系列を作成し、その傾向を明らかにした。パンデミックや世界金融危機などの大きな負のショック時に、デュレーションの短い銘柄のパフォーマンスが大きく低下することが示唆される結果が得られた。この結果を受けて、市場の不確実性を示す指標を用いてデュレーションlong-shortリターンを説明できることを明らかにした。 以上の分析結果を "Implied Equity DUration: Lessons from the Japanese Financial Crises" として論文にまとめ、日本ファイナンス学会第5回秋季研究大会(オンライン)にて学会報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連分野のサーベイは順調に進んでいる。1年目の研究結果から論文を執筆して既に学会報告しており、今後投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究結果を踏まえ、以下の2点を候補として考えている。(1)株式デュレーションの短い銘柄が危機時にパフォーマンスが低下することはデータから示された。これを株式デュレーションがプレミアムを生む原因としてとらえ、理論モデルを構築できるのではないか。(2)市場の不確実性を示す指標として、深刻な危機時にのみ大きく上昇(または下落)するような性質を持つ系列を用いることで、株式リターンの説明力が上昇するのではないかと予想される。例えば、EPU(Economic Policy Uncertainty)はそういった性質を持つ指標であるが、これらの指標がとらえているリスクとは何なのか、経済学的な解釈が可能な説明ができるとよいのではないか。 今後追加のサーベイを行い、より具体的な研究方法を決定する予定である。
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Causes of Carryover |
サーベイや予備的な分析の結果から、2023年度は追加のデータを購入せずに研究が可能であることが分かった。2024年度以降の研究では、新たなデータの購入が必要と思われることから、データの購入費用として使用する。
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Research Products
(2 results)