2023 Fiscal Year Research-status Report
Empirical research on bank lenders' use of accounting information
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23K01665
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
河内山 拓磨 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (70733301)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 融資契約 / 財務報告 / 財務制限条項 / 関係性融資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日本の融資機関における会計情報の活用実態を分析することで,債務契約における会計情報の役割を解明することにある。とりわけ,①財務報告と融資契約の関係性,②融資機関による私的情報の取得と活用,③財務制限条項における会計情報の選択と合理性について多角的に検討する。本研究から得られる成果は,学術的貢献のみならず,会計制度および融資・資金調達実務に関する有益な示唆を持つと期待される。 研究プロジェクト1年目となる令和5年度では,当初の研究計画にもとづき,和文論文と複数の英文ワーキングペーパーの執筆・投稿・修正および学会報告を実施した。第1に,文献レビューをつうじて融資機関が持つ私的情報との対比から公表会計情報の相対的重要性について考察した論文を執筆し,和文学術誌に掲載した。第2に,過年度に実施した融資機関の会計情報の利活用に関するアンケート調査研究について海外学術誌への投稿・修正を繰り返した。第3に,財務制限条項で利用される利益項目に注目し,その選択に係る合理性を検証した英文ワーキングペーパーを執筆・投稿した。第4に,私的情報を持つとされるメインバンクが財務報告の質に及ぼすモデレート効果に注目したワーキングペーパーを海外学術誌に投稿し,修正等を行った。第5に,条項抵触にともなう企業-銀行間の再交渉に注目したワーキングペーパーを投稿・修正した。第6に,本研究プロジェクトで計画している融資機関を対象としたアンケート調査について,その質問票の設計等に着手した。とくに実際の融資実務を踏まえた質問項目を設定すべく融資担当者への予備的ヒアリングを実施した。 このほか,発展的に着手しているメインバンクがもたらす経済的帰結に注目した英文ワーキングペーパーを執筆し,この論文については国内学会にて研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況はおおむね順調である。当初の研究計画ではプロジェクト初年度において関連先行研究の収集と整理,および,融資機関を対象としたアンケート調査の実施に向けた準備を行うことを予定していた。この計画通りに令和5年度では関連文献のレビューを実施し,その成果を和文学術誌に公表することができたほか,アンケート調査の実施に向けた準備を進めることができた。 また,論文執筆という点では,複数の英文ワーキングペーパーの執筆,投稿,修正を繰り返すことができており,掲載に向けた活動を順調に進めることができている。いまだ公表論文としての成果には至っていないものの,学術誌への投稿や学会報告を実施することで有益なコメントを多数もらうことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,大きく3つのことを実施することを考えている。第1に,現在,着手している英文ワーキングペーパーの修正・再投稿である。査読プロセスにおいては編集長や査読者からコメントや改善要望を多数もらうため,これに適切にこたえていく必要がある。こうしたプロセスはワーキングペーパーを公表論文という成果に結びつけるうえで最も重要な段階であることから,十分な時間と資源をもって臨む予定である。 第2に,当初の研究計画にもとづき,融資機関を対象としたアンケート調査を実施することを予定している。アンケート調査の効果的な実施にあたっては実際の融資実務を事前に理解することが必要不可欠であり,質問票の設計に向けたヒアリング調査を実施したうえでアンケート調査に臨む予定である。また,ヒアリング調査やアンケート調査は人を対象とした研究となるため,所属機関における研究倫理審査委員会の承認を事前に得る。 第3に,学会や研究会への参加である。国内外を問わず,研究報告時間およびフィードバックが十分にもらえる機会を探索し,研究内容の改善に努めていく予定である。これにより,最終的な成果物である論文掲載につなげていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,主に2つある。ひとつは,英文ワーキングペーパーの執筆および投稿スケジュールが早まったためである。当初は令和5年度に英文ワーキングペーパーを執筆のうえ複数の国際学会に参加する予定であったが,研究成果という観点からは論文投稿に早めに着手することが重要であると考えた。そのため,当初の予定よりも旅費支出が少なくなっている。いまひとつは,データ入力作業に伴う謝金である。当初は債務契約データベースの更新にあたって所属機関に在籍している大学院生の協力を得る予定にあったが,当該作業を自ら担当することが可能となったため,これに伴う人件費が現時点では発生していないことに由来する。 一方で,次年度以降においてもデータベースの購入・更新にあたっては相応の研究費が必要となるほか,アンケート調査の実施にあたり外部の調査協力業者に業務の一部を依頼する予定にあるため,上記の次年度使用額をこれらに充当することで研究活動を円滑に進めていく予定にある。
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