2023 Fiscal Year Research-status Report
A Theoretical and Empirical Study of Manager's Career Concerns and Tax Aggressiveness
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23K01707
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村上 裕太郎 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (30434591)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 契約理論 / キャリア・コンサーン / 税負担削減行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、経営者のキャリア・コンサーンに着目し、「キャリア・コンサーンが強い経営者ほど税負担削減に積極的か」について数理モデルでそのメカニズムを明らかにし、その後データを用いて実証的に検証する。経営者は自身のキャリアに対する関心(キャリア・コンサーン)から、自分の能力をアピールすべく働くインセンティブをもつことが知られている。一般的に、経営者の在職期間が短いほど、転職市場は経営者の能力についてわからない部分が多いため、キャリア・コンサーンは強まると考えられている。しかし、米国のデータを用いた実証研究によると、結果は混在している。本研究では、どのような企業の経営者が、キャリア・コンサーンが強まると税負担削減行動に積極的あるいは消極的になるのかを理論モデルから明らかにし、モデルから導かれた仮説についてデータを用いて実証的に検証することで、混在している実証結果を整合的に説明することを目標としている。
本研究で特に注目したいのは、どのような企業の経営者が、キャリア・コンサーンが強まると税負担削減行動に積極的あるいは消極的なるのかである。直観的に、キャリア・コンサーンの便益がコストを上回る企業においては税負担削減行動に積極的になるだろう。したがって、直面している法人税率(限界税率)が高い企業、成熟して生産性が低い(生産活動よりも税負担削減行動が魅力的な)企業、税負担を減らすレピュテーション・コストが低い企業(BtoB企業や中堅企業など)は、キャリア・コンサーンと税負担削減行動に正の関係があるかもしれない。逆に、法人税率が低い企業、生産性が高い企業、レピュテーション・コストが高い企業は、キャリア・コンサーンが強まるほど税負担削減行動に消極的になるかもしれない。
2023年度は、上記テーマに付随する関連研究成果をフィンランドで開催されたヨーロッパ会計学会で報告、書籍の1章を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、ヨーロッパ会計学会での学会報告を中心に、関連論文の海外学術誌への再投稿、書籍の出版とおおむね順調に研究活動を遂行することができた。特に、再投稿していたJournal of Accounting and Public Policy誌からは、条件付き採択の連絡を受け取った(正式な採択・出版は2024年度)。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、エージェントが階層別になっているプリンシパルーエージェント・モデルをJournal of Management Accounting Research誌に投稿する。さらに、キャリアコンサーンを明示的に取り扱った理論論文を執筆し、査読付き国際学会に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
海外学術誌への投稿が2024年度に先送りとなったため。学術誌投稿のための英文校閲料および学術誌投稿料に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)