2023 Fiscal Year Research-status Report
An attempt to caring with collective trauma in the aftermath of Fukushima nuclear disaster through open dialogue practice
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23K01797
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
牛島 佳代 愛知県立大学, 看護学部, 准教授 (10336191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成 元哲 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20319221)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 原発事故 / 分断修復 / オープンダイアローグ / 語り合いの場ふくしま / 介入研究 / 福島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地域社会に長期的な影響と深刻な分断を招いた大規模な災害である東日本大震災と福島原発事故の現場において、 オープンダイアローグの手法を応用して介入することにより、福島県内外の社会の分断を修復し、対話的状況を復活させるための道筋をつけることにある。大きく二つの取り組みを進めた。 第一に、福島県内における分断の修復の試みである。われわれが、2013年から継続して行ってきた質問紙調査の個人の回答の軌跡を記録した「ふり返り手帳」を、参加者に持参してもらい、原発事故後の生活をふり返り、語り合う「語り合いの場ふくしま」(ワークショップ)を開催した。参加者それぞれが自己の体験をふり返り、その当時の思いや気持ちを参加者同士でそれぞれの違いも含めて共有する機会をつくった。ワークショップの参加者は少数ではあったが、自由な雰囲気の中、さまざまな対話が行われ、終了後のアンケートでは満足度が高い結果を得ている。 第二に、福島県内と県外の分断の修復の試みである。原発事故から13年が経過し、国内では風化が進んでいる。東日本大震災と原発事故の体験を福島の当事者から県外に伝えることは、他人事として捉えていた災害をわが身に置き換えることで当事者の痛みを理解することにつながる。また、当事者自身も語りを通して自己の経験を相対化し、他者に伝えることでエンパワーメントされることが期待される。この取り組みとして、愛知県内の子育て広場と福島県内の当事者をオンラインでつなぎ、震災・原発事故後の子育てした経験や気づきを、福島県外の子育て中の母親を対象に語ってもらい、これから備えておくこと等について、双方でディスカッションを行った。当事者からは、愛知県の参加者の反応の高さに喜びを感じたこと、愛知県の参加者からは、このような機会を継続してほしいとの声が聞かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2024年3月に福島市内の会議室にて「語り合いの場ふくしま」を開催し、少人数ではあったものの、自由な雰囲気の中、さまざまな対話が行われ、満足度は高かった。また、福島県と県外をオンラインでつなぎ対話をする試みについては、県外での候補者のリクルートに時間を要したものの、2024年2月に愛知県名古屋市の子育て広場で「原発事故当事者の話を聞き語り合う会」を実施することができた。双方の参加者の満足度は高く、今後も継続して開催することが可能であるという確かな手応えを得ることができた。その意味で、研究はおおむね順調に推移していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画にしたがって、これまでの13年をふり返り深層インタビューを実施するとともに、福島県内での「語り合いの場ふくしま」を継続して開催する。と同時に、研究者が常に介在しなくても、これに触発され、地元の当事者が自ら対話の場を作ってみたいと思えるような仕掛けを行ってみたい。さらに、福島と県外をむすぶ「原発事故当事者の話を聞き語り合う会」についても開催協力団体をリクルートし、愛知県内はもとより、東京、大阪、福岡などに拡大していく予定である。
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Causes of Carryover |
ワークショップ「語り合いの場ふくしま」の参加者のリクルートにおいて十分な人数が集まらなかったことに加え、福島県外とのオンライン交流会についても、開催協力団体のリクルート、更には内容や運営について時間を要し、想定より開催回数が少なかった。更には、別の資金を活用できたこともあり、旅費と人件費・謝金において次ワーク年度に繰り越す形となった。 次年度は、すでにワークショップ「語り合いの場ふくしま」、福島県外とのオンライン交流会ともに複数回予定が立っており、順調に使用できると考える。
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