2023 Fiscal Year Research-status Report
戦後在日コリアンの生活問題形成過程の歴史-国家・企業・地域社会との関係から-
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23K01835
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
竹中 理香 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (70410610)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 在日コリアン / 高齢在日朝鮮人 / 生活保護 / 民生委員 / 排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は①戦後在日コリアンをめぐる生活問題・運動・法的地位・社会保障制度などに関連する文献レビュー、福祉国家におけるマイノリティや外国人に関する近年の議論に関する文献の収集および分析、キーワードの抽出と概念整理、②1945年以降の在日コリアンに関連する日本の外国人政策(在日コリアンの法的地位、社会保障制度に関する諸権利に関する法令・告示・通達)の分析を目指した。 これらの成果としては、「高齢在日朝鮮人の貧困と排除の背景にあるもの-戦後民生委員制度との関係から」として論考としてまとめた(『新しい地域福祉の「かたち」をつくる』ミネルヴァ書房)。 論考では、1953年からはじまる「適正化」の時期には民生委員への陳情・脅迫事例が「適正化」実施の根拠とされたが、国の政策と在日朝鮮人の当事者との狭間にあった民生委員は、個々人あるいは地方の民生委員連盟等の組織レベルでは、生活保護制度における在日朝鮮人の処遇に対して一部同情的な見解も見られたものの、総体としては結果的に国の保護の「適正化」に利用されたといえる。また「適正化」を進めるにあたって、生活保護の地区担当員が朝鮮人の生活習慣や言語等の違いにより生活実態を把握することが難しいという認識を示していたにもかかわらず、逆にそのことをもって保護廃止・停止の根拠として利用されたという側面があったことも確認した。 また、福祉サービス利用からの排除の問題についても、言葉の壁や文化・歴史への理解の点などから、民生委員制度のもつ国籍条項の問題が少なからず影響を与えていることも明らかにし、現行の民生委員制度の問題点や見直しの必要性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、並行して進めていた別の研究にエフォートを割いたため、当該研究に配分する時間が予定より減少した。 しかしながら、予定していた先行研究のレビューと戦後日本の外国人政策に関する分析は実施することができた。 残された課題として、福祉国家におけるマイノリティや外国人に関する近年の議論の文献収集・分析の未実施があるため、2024年度に実施したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の先行研究の検討の続きとして、まずは、福祉国家におけるマイノリティや外国人に関する近年の議論に関する文献の収集および分析を行う。 さらに、研究対象地域の公立図書館にて、その地域と企業の歴史に関する文献資料および地域の民族組織の運動史や各種機関紙・会報などを収集する。収集する資料は、『水島製作所60周年記念誌』『川鉄水島労働運動史』『倉敷の歴史』『倉敷市史』『倉敷・水島 日本資本主義の展開と都市社会』『倉敷・児島・玉島・水島分析シリーズ』などを予定している。また、同地域にある民族学校の「父母の会」を通して、家庭に所蔵されている戦後の在日コリアンに関する写真などの資料を収集する。 収集した資料を、経済的側面と文化的側面の両面に着目しながら、国家や制度に関するもの、企業に関するもの、地域社会(日本人や在日コリアンコミュニティ)に関するものに整理分類し、パソコン入力してまとめる。
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Causes of Carryover |
並行して進めていた別研究へのエフォートの配分を多く割いたため、本研究に割く時間が予定より少なかったことが理由である。 2023年度に実施できなかった、研究対象地域の図書館の資料収集および文献購入の費用として充てたい。
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