2023 Fiscal Year Research-status Report
Research and development of a mindfulness-based program to support social workers who provide end-of-life care
Project/Area Number |
23K01951
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
池埜 聡 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10319816)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 祥明 独立行政法人国立病院機構別府医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, その他 (60813954)
玉野 緋呂子 独立行政法人国立病院機構別府医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, 医療社会事業専門職 (90973975)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | マインドフルネス / 終末期 / エンド・オブ・ライフ / ソーシャルワーク / ソーシャルワーカー / 援助関係 / 両立支援 / オンコロジー・ソーシャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的、全人的な終末期支援の実現に資するソーシャルワーカーのためのマインドフルネス・ベースト・プログラムの開発にあたり、2023年度の成果を以下4点から報告する。 1.研究方向性の明確化:研究分担者2名との集中的な打ち合わせを複数回行い、1) 終末期におけるソーシャルワークの役割と価値基盤のあぶり出し、2) 終末期支援を可能にするソーシャルワーク継続支援の現状と課題の抽出、そして3) 終末期支援ソーシャルワークの先行研究の整理、などの活動がマインドフルネス・プログラムの構築に先行して重要であるとの共通認識を得た。 2.終末期支援の現状把握:上記研究指針のもと、研究分担者2名との集中的なケース・カンファレンスを実施し、長期的な支援継続が終末期支援にもたらす影響、そしてソーシャルワーカーのマインドフルネス経験が死を意識した患者との援助関係に与える影響をケース・スタディ法から抽出した。 3.包括的文献研究:海外のオンコロジー(がん支援)・ソーシャルワークの現状、終末期支援におけるソーシャルワークの役割、そして終末期支援に及ぼすマインドフルネスの影響について文献レビューを実施した。 4.上記の活動は、学会発表「医療ソーシャルワーカーのマインドフルネス経験がもたらす終末期支援:生活支援から死後支援に至ったがん患者事例への省察をもとに」『第77回国立病院総合医学会』、そして2本の論文出版「日本におけるがん支援(オンコロジー)ソーシャルワーク構築のための探索的研究:両立支援から終末期支援へのマインドフルネスの活用を踏まえて」『Human Welfare』16(1), 83-100, 「ギャンブル等依存症に対するソーシャルワーク実践:地域連携による持続的なマインドフルネスを可能にした事例をもとに」『Human Welfare』16(1), 101-116, としてまとめられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マインドフルネス・プログラムの構築に先行して、終末期におけるソーシャルワーク実践の現状と課題の整理が必要であるとの認識から研究分担者との協働のもと、ソーシャルワーク現場での探索的調査をもとに研究をスタートさせた。2023年度は医療ソーシャルワーク分野に焦点を当て、海外オンコロジー・ソーシャルワークに関する文献と国内関連文献の比較、そして研究分担者が勤務する医療現場での実情を深く読み取る作業に時間を要した。 その結果、1) 終末期支援におけるソーシャルワークそのものの実態が不明瞭で正式なガイドラインもないこと、2) 両立支援から患者とのかかわりを継続することで終末期支援の内容、目的、方法が大きく変わってくること、3) たとえ両立支援の目的であってもソーシャルワーカーによる終末期移行が予測されるすべての患者へのリーチアウトには限界があり、終末期支援を選択的に行わざるを得ない現状があること、そして4) カルテ記録の項目が終末期のソーシャルワーク機能を集積するためには不十分であること、などの問題意識が共有され、マインドフルネス・プログラムを考える上で事前に整理しなければならない側面が浮き彫りとなった。 これら問題意識を踏まえ、研究の方向性としてクリニカル・データマイニングにもとづく後ろ向き研究(retrospective research)とコーホート研究まで視野に入れるかたちで拡張したため、高齢者福祉施設及び海外フィールドワークが当初予定していたスケジュール調整がかなわず、未達成となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、以下の項目について推進していく 1.未達成項目の補完:昨年度未達成となった海外及び国内高齢者施設における終末期支援の実情とソーシャルワーカーの役割についてフィールドワークを実施する。 2.成果発表:昨年度実施した包括的文献レビューにもとづく論文出版を実現する。具体的には、1) 終末期支援におけるソーシャルワーク機能、2) 両立支援から終末期支援に移行したケーススタディ、そして3) 終末期支援に関連するマインドフルネス研究といったテーマを想定している。 3.探索的調査の実施:終末期支援がケースロードに含まれ、2年以上のマインドフルネスのプラクティスを継続しているソーシャルワーカー3名への探索的インタビュー調査を実施し、マインドフルネスの終末期支援に与える影響について浮き彫りにする。本調査は、研究代表者の所属機関による倫理審査をすでに経ており、2024年度中の論文投稿を視野に入れる。 4.クリニカル・データマイニングのプロセス構築:昨年度に実施した海外のオンコロジー・ソーシャルワーク実践スタンダード基準と評価項目(オンコロジー・ソーシャルワーク・インデックス)のレビューをもとに、研究分担者の所属病院におけるクリニカル・データマイニングを可能にするカルテ・システムの構築を目指す。このシステムによるデータ収集及び分析からソーシャルワーカーの終末期支援における役割と機能をあぶり出し、マインドフルネス・プログラム構築のための基礎的情報として活かす。 5.トラウマ及び悲嘆に対するマインドフルネスの効果と限界の整理:がん告知によるトラウマ反応や悲嘆にマインドフルネスが及ぼす影響を緩和効果と有害事象の両側面から包括的なレビューを実施し、本研究の理論的枠組みを強化する。昨年度に研究協力者と複数回に及ぶカンファレンス及び講演会(4回シリーズ)を実施しており、内容の著書出版を目指す。
|
Causes of Carryover |
カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) 及びとロサンゼルス近郊の緩和ケア施設、米国Upaya Zen Center、国内高齢者施設のフィールドワークを実施するためのスケジュール調整が叶わず、未達成となったため、次年度使用額が生じた。前述した研究方向性の策定により、マインドフルネス・プログラム構築に向けて理論的枠組み及びプログラム内容の確定に向けた終末期支援におけるソーシャルワークの現状把握を優先させたために生じたスケジュール変更によるものである。
|