2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K01998
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
吉金 優 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 准教授 (10530131)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | エクオール / 海洋深層水 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,エクオール(Eq)の健康増進効果が注目されている。Eqは更年期障害緩和,骨粗鬆症予防など強いエストロゲン様作用を有する。Eqは大豆イソフラボンの一種ダイゼインが,腸内のEq産生菌により代謝産生される。しかし,Eqは日本人の30~50%しか産生されない。 我々は,調整海洋深層水(深層水)の長期飲用による便秘の改善,短鎖脂肪酸の産生亢進などの腸内環境の改善効果を明らかにしてきた。また,Eq産生者のEq産生を亢進することも明らかにした。Eq産生者の腸内細菌叢を調べたところ,いくつかのEq産生菌の占有率の増加も観察された。しかし,深層水がEq産生菌に影響を与えるかは不明である。そこで本年は,深層水のEq産生亢進作用のメカニズムを明らかにするために,深層水がEq産生菌の増殖能やEq産生能に及ぼす影響を調べた。 被験菌として,Slakia equolifaciens JCM 16059(S.e)を用いた。培養は,ダイゼインを含む,超純水もしくは硬度の異なる深層水で調製したGAM培地を用いて,37℃で嫌気培養した。また,深層水の主要ミネラルの影響をみるために,深層水の代わりに,塩化カルシウム(Ca)もしくは塩化マグネシウム(Mg)水溶液で調製した培地も用いた。増殖能は濁度法,EqはHPLC法を用いた。 深層水は,超純水に比べてS.eの増殖度およびEq産生量を有意に増加させた。また,その作用は深層水の硬度依存的であった。さらに,濁度あたりに換算したEq量も増加させたことから,Eq産生能も亢進させることが示唆された。Mg,Ca水溶液で調製した培地で培養したところ,MgはS.eの増殖度およびEq産生量に影響を与えなかった。一方,Caは同濃度の深層水と同程度までS.eの増殖度およびEq産生量を増加させた。以上,深層水はS.eの増殖促進およびEq産生亢進作用を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り進捗していることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
調整海洋深層水飲用によるエクオール産生亢進の作用機序および関与成分を明らかにするために、具体的な研究計画および明らかにすべき内容を以下に示す。 1.マウスの調整海洋深層水飲用によるエクオール産生、腸内細菌叢に及ぼす影響 ヒトの腸内環境は被験者の生活習慣、特に食事内容により変化を受けやすく、応募者らのこれまでの臨床試験では、4週間に及ぶ食事管理までできていない。よって、腸内細菌叢の変化も不明瞭なところが多く、その他のエクオール産生菌に影響を及ぼしている可能性も否定できない。そこで、食事条件を同一にしたマウスで、調整海洋深層水のエクオール産生に及ぼす影響を明らかにする。 2.エクオール産生菌に及ぼす調整海洋深層水の影響 本年度、調整海洋深層水がエクオール産生菌Slakia equolifaciensの増殖促進およびエクオール産生亢進作用を有することが示唆された。エクオール産生に関与する遺伝子発現に及ぼす影響を明らかにする。 3.エクオール産生酵素に及ぼす調整海洋深層水の影響 既知エクオール産生菌S. equolifaciensはゲノム解析され、3つの産生遺伝子のホモログが存在する。これら酵素の大腸菌発現系を構築し、精製酵素を得る。酵素の活性や基質親和性に及ぼす海洋深層水の影響を測定する。 4.エクオール産生亢進に寄与する海洋深層水中の関与成分の同定 海洋深層水中に含まれる各ミネラルを、それぞれ、もしくは数種を組み合わせて純水に溶解し、1.と同様の実験を行う。これにより、どのミネラルにエクオール産生亢進作用があるのかを明らかする。
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Causes of Carryover |
一部研究計画を変更し、次年度に遺伝子発現解析を実施することにしたため、消耗品費に残額が生じた。今年度の残額分は、次年度の遺伝子発現解析用試薬の購入に充てる。
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