2023 Fiscal Year Research-status Report
読譜視線計測に基づく演奏ミスの改善ー高齢者ピアノ学習を中心として-
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23K02149
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
古庵 晶子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (90639337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹川 佳成 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (60467678)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高齢者 / ピアノ演奏ミス / 視線計測 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年3月に収録した大学生6名のピアノ演奏動画を分析し、すでに前年度に収録した7名の大学生より習得レベルが低い学生を選んだことから、比較を行った。そのうえで、これまでに得た高齢者のピアノ演奏ミスの傾向9点のうち、視線の情報処理に関係すると思われる点において照合させた。 高齢者と大学生の違いについては、楽譜上の周辺視が曖昧であったり、指の準備に失敗して遅滞が起こるが、高齢者の場合は鍵盤を確認する時間がかかるために遅延が起こるという点が見られた。大学生の場合はミスをしそうな箇所で自信の無さから鍵盤を見るが、高齢者はとにかく鍵盤を見ることを前提として演奏する様子が窺えた。学生には無いけれど高齢者に見られるのは、弾き損なったことによる確認とミスタッチ以外のミスの回避の2点であった。また、大学生のミスはミスタッチによるところが大きい傾向があり、高齢者は読譜ミスによる傾向が見えた。それらは、大学生の方が周辺視の幅が高齢者よりも広いことが一因と言える。その他の演奏ミスについては、年齢に関係なく習得レベルの差によるものだと考えられた。 以上は、動画上で明らかに分かる楽譜上の視線の動きと、楽譜から視線がそれた(=鍵盤の方を見る)場合の推測によるところが大きく、数値の分析がまだであることと、鍵盤へ視線を移動させる方向が明確でないことが課題である。熟考の末、数値データの分析は中止することにし、実験システムに鍵盤への視線をキャッチする機能を加味し、それによって新たにデータを収集し、これまでに動画から得た分析結果を追認する形で数値データの分析を行うことにした。23年度はこれまでのまとめに加え、新しい実験システムの開発の方に時間を多く割いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の前提となる別の研究課題(19K02464)の見通しが甘かったことと、分析手法を先行研究から得ることが出来ず手探りであったこと、担当授業数増加等の影響でかなり遅れ、計画していたことが遂行できなかった。23年度は、その研究を途中のまま計画変更することで完了させるので精一杯であった。その間に本研究での研究方法を一新するために討議を重ねてきた。当初、これまでと同じ被験者で実験を継続する予定であったが、新たに別の被験者で行う必要が出てきたため、新たな被験者を探す時間も必要で、年度内に実験を実施するに至らなかった。しかし、研究倫理審査委員会による承認の期間から1か月過ぎた時点で漸く実験の機会を得ることが出来たため、時期的な点では予定していた計画に少し近づくことが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である次年度には、早い時期に高齢被験者の1つ目の実験(演奏)データを得ることが出来る見込みである。年度内に比較対象の若年成人のデータも採取し、高齢被験者の演奏ミスの特徴を明らかにしたい。また、新たに採取するデータの分析のための処理を、これまで手作業により一人で行ってきたが、デジタル処理も併用して行う見通しが立った。人員は増えていないが、少しはペースを速められそうである。その後討議を重ねながら、高齢者の演奏ミスをできるだけ回避するための楽譜の編曲方法について考察し、演奏ミスが軽減されるかどうかの実験(2つ目のデータ採取)を行いたい。 そのため次年度である24年度は、動画データ分析を充実させるための新たなデータから、動画と同時に得られた数値データの分析を中心とするが、同時に楽譜の編曲についても、現時点で可能な範囲で検討を始めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた新たな実験の手続きのうち一部を変更し、新たに準備する課題ではなく過去に実施したのと同じ課題を用いた実験をすることとなった。そのため、予定していた被験者の方々(過去の課題での実験実施)にはお願いすることができなくなった。新たな被験者とその紹介者を見つけることに時間がかかったこと、そして新しい実験システムの構築に時間がかかり、当該年度内に新たな実験をすることが出来なかった。そのため、機材の多くを購入すること、前提となる過去の実験の分析結果を口頭発表するための旅費を支出するのみにとどまった。 次年度は、新たな被験者に対するデータにおいて、分担者が中心となって分析を進めていくため、助成金の使用目的としては、口頭発表のための旅費が主な出費となる予定である。また、高齢者の比較対象として若年成人への調査も必要となるため、その謝礼等、人件費もかかる予定である。また、分析の時点で支障が生じた場合、再度データを採取する必要が出る可能性もあり、いずれにしても、物品購入よりは人件費のほうがかかる予定である。
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