2023 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の少女雑誌文化における女性同士の関係の排除と異性愛関係の拡大に関する研究
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23K02192
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
今田 絵里香 成蹊大学, 文学部, 教授 (50536589)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 少年少女雑誌 / 男女共学 / 男女の恋愛 / 同性同士の親密な関係 / メディア / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、戦後日本において男女共学が実施されるとともに、少女雑誌がいつ、そしてどのように、男女の恋愛を描き出したのかを明らかにした。戦後、男女共学が実施され、中等教育機関において男子生徒と女子生徒がともに学ぶようになった。このような現実世界の変化について人びとはどのように意味づけをおこなうよう仕向けられたのだろうか。人びとの意味づけに大きな影響を与えたのはメディアである。女子中学生・高校生が接したメディア、とくにもっとも身近なメディアであった少女雑誌は、彼女たちに意味づけのための枠組みを与えたと考えることができる。そこで戦後日本の少女雑誌である『ひまわり』1947年1月~1952年12月号、『ジュニアそれいゆ』1954年7月~1960年10月号の小説、読者の投書、編集者の記事を分析し、『ひまわり』の小説は女同士の友情に関する小説、家族・親族の愛情に関する小説が多数を占めていたが、『ジュニアそれいゆ』の小説は男女の恋愛に関する小説、家族・親族の愛情に関する小説が多数を占めていたこと、『ひまわり』の読者投稿欄には多数の「憧れの君」に関する投書・ごく少数のボーイフレンドに関する投書が見られたが、『ジュニアそれいゆ』の読者投稿欄には「憧れの君」に関する投書はなく、多数のボーイフレンドに関する投書が見られたことを明らかにした。1955、1956年を境に「女同士の友情に関する小説・エスに関する小説から男女の恋愛に関する小説へ」「多数の「憧れの君」に関する投書・ごく少数のボーイフレンドに関する投書から多数のボーイフレンドに関する投書へ」という変化が起きたことを示した。編集者によると、そのような変化が起きたのは、男女共学の実施を背景に男女の友情が奨励されるようになったためであるとされていた。これは北田暁大・東園子編『岩波講座社会学第12巻 文化・メディア』岩波書店にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、『ひまわり』『ジュニアそれいゆ』という少女雑誌を分析し、戦後日本の少女雑誌文化における同性同士の親密な関係の排除と異性愛関係の導入の過程を明らかにし、それを通して戦後のジェンダー秩序と異性愛主義の分かち難い関係を明らかにした。そのため本研究目的を概ね達成しつつあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き戦後日本の少年少女雑誌文化における戦後日本の少女雑誌文化における同性同士の親密な関係の排除と異性愛関係の導入の過程を明らかにし、それを通して戦後のジェンダー秩序と異性愛主義の分かち難い関係を明らかにするとともに、新しく比較の視点も取り入れる。比較の視点を取り入れた研究はまだ充分に達成できているとはいえないため、今後は欧米の少年少女雑誌文化と比較し、戦後日本の少年少女雑誌文化の特徴を把握することに重点を置いて研究を進める。
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Causes of Carryover |
2024年度に、戦後日本の少年少女雑誌の史料、および、戦後日本の新制高等学校の史料を収集する必要が生じた。したがって、2024年度には、史料収集に関する費用が大幅にかかることが予期できた。そのため、2023年度の使用計画を変更し、2024年度に繰り越すことにした。この手続きによって、2024年度使用額が生じた。 本研究は、戦後日本の少女雑誌文化における同性同士の親密な関係の排除と異性愛関係の導入の過程を明らかにし、それを通して戦後のジェンダー秩序と異性愛主義の分かち難い関係を明らかにする。そのため、戦後日本の少女雑誌である『少女の友』『少女クラブ』『ひまわり』『ジュニアそれいゆ』『女学生の友』『ジュニア文芸』『小説ジュニア』(『Cobalt』)の関連記事を1945年から1970年まで収集し、分析する。また比較のため、戦後日本の少年雑誌である『少年クラブ』『少年』『中学生の友』の関連記事を1945年から1970年まで収集し、分析する。さらに男女共学実施について調査するため、東京都の新制高等学校に関する史料として東京都教育庁の報告書、東京都議会の議事録、東京都の高等学校の学校史、学校新聞、学校内雑誌を1945年から1970年まで収集し分析する。2024年度には、戦後日本の少年少女雑誌の史料、および、戦後日本の新制高等学校の史料を収集する。ゆえに史料収集に関する費用を支出する計画である。
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