2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Modern History Education in Micronesia and Its Neighboring Regions: Toward the Forging of Mutual Understanding between Japan and the Regions
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23K02217
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
玉井 昇 獨協大学, 外国語学部, 教授 (70527118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 幸倫 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (60449113)
川崎 典子 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00775801)
石見 禎 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 講師 (20854483)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 北マリアナ諸島 / 歴史教育 / 社会科教育 / サイパン / パプアニューギニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで取り組んできたミクロネシア3国の歴史教育に関する研究成果を基盤とし、フォローアップ調査をすることでその精度を高めながら、一部周辺地域にも対象を拡大していくことを目的としている。とくに、日本による統治や支配と戦禍の経験は、現地の教育の中でどのように扱われているのか考察を行うことで、当該地域の学際的な教育学的研究の基盤づくりを目指している。 本年度もおよそ2か月に1回程度の研究会等を開催してきた。形式的には初年度にあたるが、前研究課題と併行して進めることで前年度から準備に着手し、開始早々に期間全体の調査方針と今年度の調査体制を整えた。つまり、ミクロネシア3国での先行研究のフォローアップを行いながら、北マリアナ諸島およびパプアニューギニアといった周辺地域の調査に着手した。とくに、前研究課題からの接続として、今年度は北マリアナ諸島から本格的に調査を行った。 具体的には、2023年9月に担当の渡辺幸倫が北マリアナ諸島を訪問し、教材や資料および関連する情報を収集しながら、教育関係者へのインタビューを行い、現地でのネットワーク作りを行った。さらに、2024年2月には現地の教育事情に精通したRita A. Sablan博士を講師に招き、北マリアナ諸島の歴史教育に関する公開オンラインセミナーを実施することで、現地調査のフォローアップを行った。その成果の一部として、「ミクロネシア三国」より強いアメリカ教育の制度下にある同地域においても、近年の歴史教育の中で日本統治時代の影響を独自に見直していこうとする動きもあることが明らかになった。 他方、パプアニューギニアに関しては、2024年3月に同国出身のSimon Peter Bahau教授を講師に招いて聞取り調査を行い、教育の概要を把握しながら現地調査の準備に着手した。一連の成果は、次年度以降にしかるべき場において公表していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、北マリアナ諸島を実際に踏査することができた。また、パプアニューギニアに関しても予備調査が完了し、次年度以降に現地調査を行う目処が立った。 とくに、北マリアナ諸島に関しては、分析に必要な歴史教材等の研究資料を揃えることができ、現地関係者とも連携してオンラインセミナーを行うことで、フォローアップも実施した。今後の追加調査を行う上でも現地とのネットワークも構築できている。 一方、パプアニューギニアについても、Simon Peter Bahau教授をはじめとする関係者から本研究への調査協力に対して確約も得られており、すでに担当の石見禎によって現地関係者との連絡調整もなされているため、次年度以降のスムーズな研究調査の遂行が可能である。 一方、前研究課題の下で2023年8月から9月にかけて行ったマーシャル諸島での2次調査、およびオンラインを中心とした実施したパラオおよびミクロネシア連邦での追加調査を基に、「ミクロネシア3国」での先行研究は最終年度としての一定の帰結を得ることができた。その成果を基礎として、今後も必要に応じてフォローアップ調査を行い、本研究の中で新規に着手した地域の調査にも活かすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、できる限り2024年度末までに対象地域での現地調査の完了を目指していく。とくに、一次調査で得られた結果について現地の専門家と意見交換を行い、研究の妥当性を向上させる。具体的には、北マリアナ諸島で実施した一次調査の結果を公開するとともに、二次調査を行う。また、パプアニューギニアを訪問し、現地調査およびフォローアップを実施する。また、すでに二次調査まで完了しているミクロネシア3国についても、必要に応じてフォローアップ調査を行う。さらに、スケジュールや予算的にも可能であれば、その他の周辺地域についても調査範囲の拡大を検討する。加えて、本研究の対象地域以外における関連分野の研究者とも意見交換しながら、得られた成果は最終年度を待たず適宜学会等で発表していく。 さらに、2025年度は前年度までに得られなかった点で特に必要な事項について、オンラインでの実施も含めたフォローアップ調査を行う。とくに最終年度になるため、主題の歴史教育の現状と課題に焦点をあて、とりまとめを行う。その成果を国内外の関連学会等で発表し、最終的に報告書としてまとめた上で、調査関係者や関係各所に還元する。 なお、調査対象国への渡航が困難になった場合など、研究が当初の計画どおりに進まない時の対応としては、これまで培ってきた経験を活かし、実施可能な研究を進める。万一長期化する場合、加えて現地出身の国内在住者らにも対象を拡大し、可能な限り研究趣旨に近い成果を得られるように努めていく。
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Causes of Carryover |
当初は新年度から新規に2カ国程度の現地調査の可能性を模索していたが、急激な円安の進行と現地の物価上昇をはじめとする経済情勢の変化に連動し、宿泊、移動、調査協力謝礼など現地での研究活動費用も高騰した。そうした予算面での懸念からも、今年度は具体的に調査遂行の目処が立った北マリアナ諸島を中心に現地調査を行った。さらに、そうした経済情勢の変化に加えて、我が国の外務省により部分的に危険レベルが引き上げられたパプアニューギニアについては、先行する研究対象国よりも一層慎重に現地の情報収集に努めつつ、現地関係者ともネットワークを築いた上で確実に現地調査を行うこととし、本格的な調査は次年度に持ち越した。他方で、国内在住の同国出身者の調査協力に加えて、オンラインで現地関係者からの聞取り調査をする目処も立っている。さらに、調査の実施方法等についても、先行研究でのモデルや経験を活用できるため、次年度に現地調査を実施しても本研究の遂行にあたって大きな影響は生じないものと思われる。
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Research Products
(3 results)