2023 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設における子どもの権利擁護-子ども参画モデルの開発によるアプローチ
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23K02270
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
山屋 春恵 常葉大学, 保育学部, 准教授 (00825903)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 子どもの権利擁護 / 子どもの意見表明権 / 聴かれる権利 / 子ども参画 / 実践モデル / 意見表明支援事業 / アドボカシー |
Outline of Annual Research Achievements |
児童養護施設等で生活する子どもたちの権利擁護については、従来から施設内虐待への対応等を通して研究が進められてきた。近年さらに課題とされているのが、子どもの意見表明権をどのように保障していくのかという点である。 各自治体においては、現在、子どもの意見表明等支援員などが入所型施設を訪問し子どもの声を聴く取みが進められている。一方で、子どもからの要望などに対し施設側がどのよう対応するのかは各施設に委ねられている。本研究は、児童養護施設において子どもの意見表明権を保障するために、子どもからの意見や要望への対応として施設職員が日常の業務で着手することができるような実践モデル、すなわち「子ども参画モデル」を開発することを目的とした3年間の研究である。 令和5年度は、子どもの権利擁護の現代的課題および実情の把握、子どものアドボカシー実践に関する実態把握のために文献講読や情報収集を行った。また、本研究で扱う神奈川県の子どもの意見表明支援事業について「自治体における子どもの権利擁護システムに関する研究-神奈川県における子どもの意見表明支援事業をとおして-」というテーマにて日本子ども家庭福祉学会にて報告し神奈川県における子どもの意見表明支援事業の実践を整理することで、当該事業を自治体における子どもの権利擁護をシステムとして機能させていくための課題について検討を行った。 さらに、児童養護施設等を対象に神奈川県の意見表明支援事業を受ける施設側の意識等に関する実態調査をアンケートにより実施した。本アンケートは、次年度実施する施設職員へのインタビュー調査の前段階としての現状把握のための調査であり、複数の施設から次年度調査協力への内諾を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度に実施したアンケート調査は当初児童養護施設のみを予定していたが、神奈川県の意見表明支援事業を受け入れている児童養護施設とともに社会的養護施設等についても対象範囲を広げ、計19施設に対してアンケートを実施した。結果からは、当該事業で得られた子どもの要望に対する施設側のフィードバックの取り組みの現状や当該事業に関する率直な評価が寄せられた。子どもへのフィードバックについては、回答のあったすべての施設で子どもから出された要望に対して実現できた事例が見られ、子どもからの声に丁寧に対応している様子がうかがえた。また、一部の施設等では、子どもからの要望に対して職員で対応を検討するだけでなく子どもとの話し合い等を通して子どもと共に解決策を検討した実践も見られ、要望等の内容によっては、子ども参画を意識した取り組みが展開されていることがわかった。 令和6年度は、本アンケート調査結果を元に一部施設に対してインタビュー調査を実施することを当初から予定しており、おおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度に実施したアンケート結果を受け、令和6年度は、子どもから出された要望等に対する施設側のフィードバックにおいて、子どもと共に解決策を検討するなど子どもの参画に意識的に取り組んでいる施設へのインタビュー調査を実施し、先駆的な取り組みに関する情報収集および分析を行うことを予定している。 なお、神奈川県における意見表明支援事業の受け入れ施設に限らず、児童養護施設等において子どもの意見や要望への対応、その他支援のプロセスのなかで子どもの参画を意識的に取り組む施設に関してはヒアリング調査を行うなど、引き続き情報収集を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度に実施したアンケート調査は、質問項目およびその方法の具体的な検討を重ねるなかで調査票の発送をせずにMicrosoft Formsにてオンライン調査を実施することとした。そのため、当初1年目に予定していた研究環境整備のための備品および消耗品購入を2年目以降に先送りすることが可能となったため、次年度使用額が生じることとなった。
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