2023 Fiscal Year Research-status Report
パリ在住邦人家庭の発達障害児支援システム構築に向けた子育て支援課題に関する研究
Project/Area Number |
23K02291
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Research Institution | Tokyo Seitoku College |
Principal Investigator |
田尻 由起 東京成徳短期大学, その他部局等, 助教 (90802249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 千春 東洋大学, 福祉社会デザイン学部, 教授 (20460553)
高橋 幸子 國學院大學, 人間開発学部, 教授 (60782844)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 障害児支援 / 家庭支援 / 海外在留邦人 / 発達障害 / 特別支援教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はパリに住む邦人家庭で発達障害(および疑い)のある乳児、幼児、児童とその保護者に対して、計画的および継続的に早期からの支援を体系的実施のための課題を明らかにすることである。本研究の2023度の取り組みとしては大きく分けて3点である。 1点目はフランスの幼児教育を含む障害児教育(特別支援教育)の制度に関する調査である。3歳児から義務教育を実施しているフランスにおける幼稚園での特に発達障害児への支援について、国民教育省のホームページ等から情報収集を行った。また通常の学校におけるインクルージョンを目指しつつ、日本と同様の分離教育を実施するフランスの教育制度全体について調査、報告を行った。 2点目に乳幼児期の障害児支援について、現地の支援施設への視察と支援の内容の特徴に関する調査を実施し、その概要をまとめた。とくに発達障害に対する支援が遅れているフランスにおいて、発達障害への支援ニーズは高く、ASD児のためのクラスの新設等で対応しているとのことであった。これら視察の内容について、研究紀要にまとめた。また日系幼稚園への視察を行い、発達に心配のある子どもの園への受け入れの実際について、実地調査を行った。 3点目にパリで障害の疑いのある子どもの子育てをしている邦人保護者に関する事例研究を行った。特に邦人が海外で発達の心配のある子どもの子育てをすることは想像以上に困難なことが多く、このような状況は子育てに様々な影響を与えると考えられる。そのため、邦人母親が異文化の中で発達に不安のある子どもを育てることの子育てへの影響について調査し、学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究拠点が海外であるため、データ収集ができる機会が限られている。そのため集中的にデータを収集し、残りの時間をデータ分析や研究発表、論文執筆の時間とする。そのため研究を早急に大きく進めることは難しいが、現状としてはおおむね予定通り研究は進展している。 一方で今日的な世界情勢を受けて航空券の高騰、円安の影響を受け滞在費の高騰等、海外のでデータ収集がより困難になっているため、効率的に研究が進められるよう、今後のデータ収集の方法についても改めて検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、2024年度は2023年度に収集したデータを整理、分析を行い、研究発表や論文執筆を行うこととする。 邦人家庭への支援を検討する際に、フランスの教育制度や障害児支援制度を調査することは、支援を検討するうえで非常に重要であり、またフランスの障害児教育(特別支援教育)は現在過渡期であるため、引き続き最新の情報を収集し、情報を整理する。 また邦人支援として、日本人学校と日系幼稚園(日本語セクションのある幼稚園)の接続についても改めて状況を把握し、障害のある子どもや特別な配慮の必要な子どもたちの接続期の移行支援について、それぞれの取り組みや、今後の取り組みの方向性について調査するために、日本人学校や日系幼稚園への取り組みに関するインタビュー調査を実施する。 併せて2024年度は、邦人保護者へのインタビュー調査も引き続き行い、個別のデータを蓄積し、個別の事例研究を行う。海外で子育てをするという状況に加え、障害のある子どもを育てるという状況は非常に複雑な状況である。そのためいくつかの個別データを合わせて質的分析を行い、パリ在住邦人家庭の障害のある子どもを育てる保護者への支援とその課題に関する研究を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、人件費及び謝金の支払いがなかったことが一番の理由である。情報を収集しそれらを整理したり、翻訳する作業を、研究者で賄うことが今年度はできたため、本年度は使用することがなかった。 次年度以降、引き続き世界的な物価の高騰、円安、旅費の高騰の影響を受けると考えられるため、それらに充てることを検討したい。特にフランスでの現地調査だけではなく、海外の学会への参加と発表、また海外誌への投稿も視野に入れて、使用していきたい。
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