2023 Fiscal Year Research-status Report
大学での学習態度形成プロセスの探索的研究:高大接続の観点から
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23K02508
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
平 知宏 大阪公立大学, 国際基幹教育機構, 准教授 (80595687)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 高大接続 / 学修経験 / 学修態度 / 自律的態度 / ギャップ解消 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、日本人大学生を対象とした大学での学習態度の形成プロセスについて明らかにすることであり、そのプロセスと高校までの学習経験等の多様な要因の影響との関係性について検討することを目的としていた。 2023年度時点においては、両者に関係性がみられるかどうかを、既存の調査データの分析と整理に基づき探索的な評価を行った。その結果、両者の間である程度の関係性が評価される一方で、特に学生の学習において高校までに培ってきた学修態度や環境とそぐわない、もしくは必要とされない大学の授業については、学生自身が忌避感を示している可能性が示唆された。また、分析・整理の結果から大学において必要とされる具体的な学修行動や大学内で選択肢として可能な学修行動それ自体が、大学という環境内特有のものであり、高校までの経験それ自体と独立しているということ、高校までの学修経験とそれらが異なるということ自体が心理的な障壁の高さになりうることを前提に、「高校と大学の接続」で議論されうる各種学修態度や活動の中身について、原理的に接続不可能であるもの、高大間で知見や状況を共有することで解決可能な問題であるものなどを整理していく必要性を示した。 さらに上記の活動と並行し、高校まで/大学での学修で要求されていた/されていると感じること、両者間に発生しうる違和感やその違和感を解消することが可能な状態にあったかどうか等の、日々の学修状況に関してたずねる探索的な調査を新たに実施した。調査の結果、大学入学後1年未満経過時点の学生のほとんどが、高校までと大学での学修でのギャップを感じていること、またその中で学生自身のギャップそのものを解消しようとする自律的態度やギャップ解消のための手段の認識などが、その後の大学生活全体に対する評価に関わりうる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に示した通り、2023年度については既存のデータから大学での学習態度と高校までの学修態度・経験の関係性を示した分析・整理作業、それらに基づく大学と高校間でのギャップとその解消過程にかかる探索的調査を行った。これらはもとの研究計画で予定していたところの、研究観点①:高校での学びの態度・経験、および研究観点②:大学での学習態度にかかるそれぞれの状況を把握するとともに、両者間の関係性を評価したものであり、両観点における調査研究および事例整理を計画通り実施したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の状況から、①高校と大学での学修経験が異なるとともに、「高校と大学の接続」で議論されうる各種学修態度や活動の中身について、原理的に接続不可能であるもの、高大間で知見や状況を共有することで解決可能な問題であるものなどを整理する必要が示されたことから、各種事例の収集と整理を引き続き実施していくとともに、そのための調査を次年度以降継続的に行っていく予定である、また②高校と大学のギャップを解消する学生の自律的態度や解消手段の認識については、入学1年未満の学生だけでなく、次年度以降2年以上経過時点の学生を対象とし、大学での諸活動全体における状況を明らかにすることを目的とした拡大調査(インタビュー調査など含む)も行う予定である。また以上を円滑的に実施してく上で、2023年度時点で得られた知見や調査データについても、引き続き詳細な分析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は、調査の実施やそのデータ分析・整理等を、年度内で研究代表者ができる範囲を先行して実施したため、実施や分析にかかる補助を必要としなかった。また調査の実施においては、既存のWebシステムなどを用いて実施したことから、追加で調査のための資料作成を必要としなかった。調査の実施・分析にかかる補助については2024年度以降に繰り越して依頼を行うとともに、2024年度以降の追加・拡大調査実施の際には、Webシステムで実施できない内容(対面インタビュー等)を盛り込むこと等から、その他にかかる費用として使用予定である。
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