2023 Fiscal Year Research-status Report
The Agentic Self of Japanese Youth: International Comparative Research Based n Dopamine Measurement and Working Memory
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23K02563
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
板垣 文彦 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 人工臓器・機器開発研究部, 研究員 (10203077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高澤 美裕 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 人工臓器・機器開発研究部, 研究員 (00815467)
角田 晃一 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 部長 (30197751)
伊藤 憲治 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (80010106)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ドーパミン / ワーキングメモリ / 実行系機能 / 主体的自己 / 視点取得 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年8月に日本応用心理学会にて、「日本の若者の主体的自己を考える」と題して、イギリス側共同研究者のブリストル大学Dave Turk氏を招き、日本側研究代表・分担者と共にワークショップを開催した。イギリス側からはこれまでに実施してきた自己関連記憶研究に関して、自身の名前が含まれる場合の記憶が他者の名前が含まれている場合よりも記憶が高まること、また、物品が自己の所有物、あるいは他者の所有物として提示されるだけであるのに、自分の所有物として提示された物への記憶が高まる実験結果の紹介があった。さらに事物の確認をする前に自分の物となる箱を選択するという主体的な行為に関して自己関連記憶の増強が生じることの報告があった。このような記憶における自己所有の効果を引き起こしている2種類のドーパミン受容体の違いについて紹介された。D1受容体は報酬手がかりに関係し、D2受容体は動機づけや学習効果に関係しているとのことである。 日本側研究ではワーキングメモリ課題である乱数生成課題が、どのようにその実行系機能を反映するか、ならびにそれらが自我同一性の確立の程度との関係において、社会の枠組みを後ろ盾とする側面(将来の職業意識や社会との連帯感)よりも斉一性・連続性の意識に関わる側面に関係している事を報告した。 また、乱数生成課題に関連して数表象の平均マグニチュードと、前後方向への重心との関係が明らかになった。このことは乱数生成課題から主体的自己意識を捉えることに関連した「視点取得」の問題と関係している。この研究は一部は2023年12月のワーキングメモリ学会「立位姿勢保持における重心動揺と乱数生成課題から見るワーキングメモリの検討」で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドーパミン測定に関して、日本の専門機関に分析を委託するのではなく、海外共同研究者が在籍し先行実験をおこなってきたイギリス・ブリストル大学において分析を実施することになった。これは日英間でドーパミン計測実験の分析手続きを厳格に一致させる必要があるためであり、このために、今年度6月にブリストル大学Turk研究室での実験手順の確認し、涙試料の冷凍保管とイギリスへの輸送の手続き準備を今年度前半におこなう。そのため日本で実施するドーパミンと自己意識に関する研究は10月からに延期する計画変更をおこなった。 なお、イギリス側のドーパミン関連実験で収集した乱数生成課題データの基礎分析は予定どおり日本で実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度予定しているドーパミン実験と平行して、主体的自己に関する理論的な枠組みの検討を始めている。昨年のワークショップでは、自己関連記憶、物の所有意識、ワーキングメモリに関する自己意識関連実験を準備しているが、それを直接的に日本における「ひきこもり」の問題に関係づけるためには、本研究の成果が主体的自己に関する評価尺度として一般に認知される必要がある。昨年のワークショップ以降、ワーキングメモリ、特に乱数生成に関する解釈モデルは、西田哲学における自己意識の捉え方と符合する観点があるとの示唆を受けたことから理論的考察を深める。 また、本研究では自己意識の問題をドーパミン濃度との計測を中心に検討してきたが、ドーパミンの低下が関連すると考えられる注意欠如・多動症(ADHD)を対象とした調査の可能性について日英間で検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度に関しては、英国側共同研究者の招聘と、日本におけるドーパミン研究の実施を予定していた。前者に関しては共同研究者が来日し共同でのシンポジュウムを開催したが、研究以外の来日日程が長期であったことから本人の申し出により正式の招聘扱いとはしなかった。このために招聘費用としての旅費はシンポジュームに関わる経費のみの支出に限定されている。昨年未使用分に関しては今年度末までに研究成果の発表を国内外どちらでおこなうかを決定し、再度の招聘、あるいは国際学会での旅費として使用を予定している。 後者に関しては、涙試料からドーパミン濃度を測定する分析について、日英間で実験の比較を厳密におこなうために十分な事前準備が必要なことが明らかになった。そのため、解析を国内業者に委託せずに、すでにドーパミン研究を進めているイギリスのブリストル大学Turk研究室に冷凍輸送し、同大学の生化学部門のスタッフによって実施する方針をとることに変更したため、この準備のために日本でのドーパミン実験開始の時期が今年度10月にずれ込んでいる。 昨年使用予定分であった実験参加者と研究協力者への謝金、必要な医療関連器具の購入も今年度に使用する。
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