2023 Fiscal Year Research-status Report
Constructing Interdisciplinary Science Education Contributing to the Preservation and Development of Intangible Cultural Heritage: Case Studies on Kiso Horse
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23K02763
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梅村 綾子 名古屋大学, 博物館, 特任助教 (80816265)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 博物館教育 / 科学教育 / 対話 / 有形資料 / 無形資料 / 木曽馬 / 地域文化 / 観光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、名古屋大学博物館に収蔵されている「最後の純血木曽馬・第三春山号」の骨格標本を中心に地域資料保存の観点から調査研究を進めている。木曽馬は、現在本州で唯一残されている日本在来馬であるが、現存する木曽馬の背景には第三春山号と地域の人々の尽力があった。 第三春山号の骨格標本(有形資料)は、木曽馬と人が築いてきた歴史文化を振り返る貴重な資料である。その存在により、木曽馬の保存と人との共生の未来を考えるきっかけを提供していると言える。一方で、木曽馬と人とのかつての暮らしは今では見られなくなり、そうした文化的背景を知らない者にとって想像すら難しい。これを「無形資料」が抱える問題と捉え、無形であるものをいかに効果的に後世に残していけるのか、後世が活用できるものになるのか、令和5年度は対話と体験を中心に科学文化教育の基盤構築に向け取り組んだ。 (対話)地域連携や専門家との連携により開催した博物館展示や講演会では、木曽馬との共生を地域市民とともに考えるとして、来場者や参加者の意見を集め、テキスト分析により来場者同士がさらに対話を深める形式をとった。結果、地域市民が木曽馬に抱くイメージとして定着した価値観がある一方、我々の現在の“行き詰まり”も見えてきた。木曽馬の「資源」としての価値追究に、木曽馬の利活用の可能性が示唆された。 (体験)木曽馬がかつて農耕馬だったことは文献から確認できるが、それを追体験するため馬耕体験会を実施した。馬力を体感し、また起こされた土から立ち込める香り、鳥や風の音、太陽の温かな日差しなど、多感覚で統合的に学ぶ機会となった。始めは単に「かわいい」と触れていた参加者も、木曽馬との協働体験を通じて、木曽馬の体、動物との暮らし、園芸や農業への興味が広がった様子で、実用面での対話が運ばれた。無形資料の保存と活用に向け、対話を促進する効果的な教育ツールの開発へとつながっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、木曽馬をテーマとし、木曽の地域文化を築いてきた木曽馬と人との暮らしに関わる無形資料の保存と活用に寄与する分野横断型科学教育の構築に向け取り組んでいる。木曽馬は長野県の天然記念物として地域文化の象徴であるように、本研究を進めるには、地域の自治体や地元住民そして地元メディアの協力が欠かせない。また、木曽馬に関する専門家、および木曽馬が関与する生物文化多様性の研究および各種活動を進める専門家との議論が必須である。さらに、当該地域に定住しなくとも地域愛着から多様に関わる関係人口とのつながりも重要である。 初年度である令和5年度は、展示やイベントなどの各種活動を通じて、関係者らとの多様な横のつながりを築くことができた。計画以上の進展として特筆すべきことは、地元の木曽町および教育委員会が主催する「きそまち回遊スタンプラリー(会期:令和5年7月22日~9月3日)」に特別協力として依頼を受け、第三春山号の剥製標本が収蔵展示されている開田郷土館(長野県木曽町)での展示紹介を担当した。これがきっかけとなり、より地域に根差した課題と向き合い、地域資料の保存と活用について関係者らとの議論が進んだ。これにより、今後の展開に向け具体的な計画のもと進めるに至っている。さらに令和6年度4月22日~5月12日には、木曽町文化交流センター(長野県木曽町)にて、名古屋大学博物館主催、木曽町共催、木曽町教育委員会後援の名古屋大学博物館出張企画展「木曽馬とはどんな馬なのか展」を開催することが決定した。多くの施設、個人の協力を得て、準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度(2年目)は、木曽町および木曽町教育委員会との連携により出張企画展「木曽馬とはどんな馬なのか展(会期:令和6年度4月22日~5月12日)」を木曽町文化交流センター(長野県木曽町)にて開催する。展示の会期中、来場者への聞き取り調査を行い、資料の収集や個人のエピソードから無形資料に関する情報を集める。さらに、木曽馬に対する意識調査を実施し、その結果を「きそまち回遊スタンプラリー~ミュージアムツアー2024~(会期:令和6年7月27日~11月23日、担当施設:開田郷土館(長野県木曽町))」での展示資料としても活用し、実証実験を行う。産学官民の連携による体験型イベントも随時開催し、実体験を通じて考える機会を提供していく。研究成果は、国内外の各種学会や学術論文にて発表し、専門家との議論を進める。 令和7年度(3年目、最終年度)も、引き続きの産学官民の連携協力のもと展示やイベント企画を中心に、多世代および障がいの有無に関わらず皆に活用いただける標本資料の作製と展示コンテンツを増やしていく。名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校との博学連携を進めており、これを教育ツールとしての開発へつなげていく。本研究の集大成は、学会や学術論文で発表するほか、令和7年10月28日~令和8年1月16日を会期予定として、名古屋大学博物館での企画展「木曽馬展(仮)」にて展示紹介し、市民とともに無形資料への意識を高める機会としていく。これを木曽馬モデルとして確立を目指し、他の資料にも応用可能かどうか検討を進める。
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Remarks |
博物館展示の開催 2件、博物館イベント(対話型・体験型)の実施 4件、一般向け講演会の実施 1件 メディア掲載 5件
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Research Products
(3 results)