2023 Fiscal Year Research-status Report
理科教育おける自己評価を活用した資質・能力を育成する教育方法の開発
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23K02783
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中島 雅子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80758342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 耕一 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50456000)
鶴ヶ谷 柊子 浦和大学, こども学部, 講師 (50614202)
松本 伸示 兵庫教育大学, その他部局等, 名誉教授 (70165893)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 自己評価 / OPPA / 教師教育 / 資質・能力の育成 / 指導と評価の一体化 / 主体的な学び / 学習・授業改善 / 教師の教育観 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、主にOPPAの3つの「問い」が、資質・能力の育成を促すその要素と構造の解明を行った。具体的には次の4点である。 (1)教師の教育観の変容について:これまでの研究により明らかになった学習・授業改善における教師の教育観の変容の効果について、今年度は特に小学校の実践を中心に検討した。具体的には、授業事例の成果と課題を整理し、教育観の変容における「問い」の効果について詳細に分析を行った。その結果、学習者の自己評価に基づく教師の自己評価が、教師の教育観の変容に有効であること。さらに、それらは、OPPA論に基づく「問い」により促されることが明らかになった。(2)「学習と指導と評価の一体化」を可能にする授業の開発:具体的には、小学校理科を中心に、教師の授業力向上における「問い」に必要な要素について検討した。その結果、OPPシートに設定された「本質的な問い」が有効であること。さらには、学習履歴欄への教師のコメントの効果が明らかになった。(3)OPPA論に基づく「理論と実践の往還」:OPPAの教師の教育観を変容させる機能をもとに、理論と実践の関係性および、その往還のための具体的な方法について、小学校の実践を中心に検討を行った。そこでは、教育実践研究における教師の主体的な学びが重要な要素であることが示唆された。(4) OPPA論を活用した教師教育方法の開発:OPPシートを活用した教員研修の在り方について、検討を行った。 これらの成果は、書籍、日本理科教育学会、教育目標・評価学会にて、論文、および、学会発表として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、令和5年度にはフィンランドとエストニアにおける自己評価を活用した教師教育に関する実態調査を行う予定であった。しかしながら、COVID-19の影響、および、円安による予算不足で渡航が困難となった。そこで、OPPA論の汎用性に関する検討を行うこととした。その結果、上記「研究実績の概要」に示す(1)および(2)について進展が見られた。 (1)「教師の教育観の変容の効果」については、OPPA論を活用する前・後における教師の教育観について、教師自身の概念や考え方をメタ認知(自己評価)することが教育観の変容において重要であり、この自己評価はOPPシートに記載された学習者の自己評価(メタ認知)により促されることを明らかにした。ここでは、教科によらず効果があること、および、クラス運営等教科外活動においても有効であることを小学校の実践を中心に検証することができた。 (2)「『学習と指導と評価の一体化』を可能にする授業の開発」については、単にOPPシートを授業に導入するだけでなく、OPPシートに設定された「問い」の機能とその効果を教師自身が理解した上で活用することが重要であることが明らかになった。そこでは「学習のための評価(Assessment for Learning)」と「学習としての評価(Assessment as Learning)」の2つの機能をあわせ持ったOPPシートの「問い」と、学習者のみならず教師自身の「学習のための評価(Assessment as Learning)」をあわせた「assessment as Learning as Teaching」の機能がその役割を果たすことが明らかになった。これは、理論と実践の往還を意味すると考えられ、教師教育において有効であることが示唆された。 (1)(2)については公刊を行うことができたので、研究全体としては概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「教師の教育観の変容」および(2)「学習と指導と評価の一体化」を可能にする授業の開発」については、中学校理科の実践を中心にOPPAの機能とその評価について整理する予定である。 (3)「理論と実践の往還」について、OPPA論を活用した実践を整理・分析することで、OPPAの問いによる効果を明らかにする。 (4)「OPPA論を活用した教師教育方法の開発」については、OPPAを校内研修に活用した事例をもとに、OPPA論における「問い」の機能について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響、および、円安による予算不足で当初計画していた海外出張が難しくなり、予算の執行ができなかったためである。繰り越した額は2024年度の学会発表及び調査・資料収集のための国内出張に使用予定である。
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Research Products
(9 results)