2023 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of learners' factors that facilitate or suppress conceptual change: Focusing on the coherence of existing knowledge and thinking process
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23K02858
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 誠子 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (20633655)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 仮説的判断 / 直観的判断 / 課題解決 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,概念変化の促進・抑制に関わる学習者要因について,事前段階における誤反応の一貫性,およびルールに基づく仮説的判断と既有知識に基づく直観的判断の思考過程の側面から検討するものである。2023年度は,課題解決における判断変容の困難さについて学習者の思考過程の側面から再検討した。具体的には,条件づけのコイ課題(舛田,2021;手叩き音にコイが近寄る行動について,レスポンデント条件づけとオペラント条件づけのうちどちらによる行動形成かをたずねる問題)における大学生の判断を取り上げた。 先行研究(舛田,2021; 佐藤,2022)では,上記の課題に対して「レスポンデント条件づけ」と判断する学習者が少なくないこと,その判断にはパブロフの犬に関する学習経験が影響していることが示されている。これを思考過程の側面から捉え直すと,パブロフの犬に関する既有知識から課題の表面的特徴に着目して「レスポンデント条件づけである」とする直観的判断に飛びつき,授業で学んだ条件づけの知識が後付け的に使用される「自己完結的推論」(佐藤・工藤,2021)が生じていると考えられた。そこで,条件づけに関する知識を使用した課題解決を促す方策として,はじめに対象となる行動の種類を判別させ適切な仮説的判断をさせること,そのうえで「行為の主体者」から「行動の制御者」へ視点を変換し行動形成のメカニズムを説明させることを試みた。大学生を対象とした授業実践の結果,コイ課題での適切判断の割合が先行研究よりも上昇し,さらに行動形成メカニズムについても適切な説明を行っていた者が多かったことが示された。この結果から,概念変化プロセスにおいてまずは適切属性に着目した仮説的判断をおこなうことが重要になることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前段階における誤反応の一貫性と教授ストラテジーの効果との関連については,収集したデータを量的・質的の両側面から再分析しその結果を研究会で報告した。研究会での検討結果を踏まえ,内容を論文にまとめている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は思考過程の側面から検討をおこなったが,仮説的判断においては(未知事例あるいは新規の文脈において)教えられた知識を使用して判断することが求められるため,知識使用に対する学習者の認識的信念が大きく影響する可能性がある。知識をどう捉えるかといった学習者の知識観についても検討をおこなうことが求められる。
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Causes of Carryover |
研究費の効率的な使用が可能であったことと,当年度参加した学会がオンラインで開催されたことによる。残額は次年度の学会・研究会の旅費,および論文投稿に係る諸費用等に充当する予定である。
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