2023 Fiscal Year Research-status Report
英単語の語彙習得に関する潜在記憶の性質の解明と効果的学習方法の開発
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23K02892
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
益岡 都萌 岡山大学, 教育学域, 特任助教 (40880860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺澤 孝文 岡山大学, 教育学域, 教授 (90272145)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 聴覚記憶の長期持続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は英単語習得の過程を解明することを目的にしているが,当該年度は主に,新奇な聴覚情報に関する長期記憶の性質について検討を行った。言語獲得の基盤となる情報の一つとして聴覚情報が挙げられ,この情報がいかにして長記憶として保持されるかを検討することは,言語習得の過程を明らかにする上で重要であると考えられる。特に,我々は日々大量に聴覚情報と接触することを考慮すれば,それらの情報に対する記銘意図の生じない事態での接触経験の効果について検討をする必要がある。したがって,偶発学習事態における数秒程度の聴覚情報が,長期インターバル後にも保持され,後続の認知処理に影響を及ぼすかを実験的に検討した。具体的には,偶発学習事態において,2秒の刺激幅を持つ音情報と2回接触することが,1週間後の再認判断に影響を及ぼすかを検討した。なお,参加者における実験以前の経験の影響をなるべく統制するため,参加者にとって刺激が新奇なものとなるよう,無作為に作成されたメロディが材料として用いられた。その結果,偶発学習事態において学習された項目と学習されなかった項目とで,1週間後の再認判断に有意な差が確認された。これらの成果の一部は国際会議において発表された。 また,同様の手続きを用いて,インターバルが1か月程度の長期であっても,同様の結果が確認された。偶発学習事態で学習された項目と学習されなかった項目は高い類似性を持ち,かつ学習から再認課題までに長期インターバルが設定されたことにより,再認課題時に参加者が意識的に学習エピソードを想起することは困難であったと考えられる。それにもかかわらず,学習された項目と学習されなかった項目は潜在的に弁別されたといえる。この結果は,言語習得の過程を考える上での前提としての,人間の聴覚情報に関する記憶の頑健性に関する証拠を提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は無作為に作成された音刺激を用いて,聴覚記憶の頑健性に関する実験を実施し,結果の再現性を確認してきたが,実験の実施に当初の想定以上の期間がかかってしまったため,言語材料に関する記憶について直接的に検討するまでに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
英単語とそれに対応する日本語の意味を材料として,偶発学習事態における接触回数,学習とテスト間のインターバルを操作し,言語情報の長期記憶の性質について検討する実験を行う。得られた結果を,これまでに研究代表者および研究分担者が収集してきた聴覚情報・視覚情報についての長期記憶に関する実験データと比較することで,言語情報に関する記憶に特有の性質が見られるかを明らかにしていく。その結果を踏まえ,効率的かつ効果的な英単語習得の学習方法について提案し,その効果を検討する。学習場面として,学習事態がある程度統制された実験室状況と,実験室外の日常的な学習状況の2つを設定し,両者の状況により学習方法の効果の違いがあるかについて検討していく。
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Causes of Carryover |
当該年度では当初の予定より実験実施が遅れる結果となったため,当該助成金が生じた。次年度において言語を材料とした実験を実施し,助成金は主に実験データの記録用のUSB購入,実験実施に関わる人件費・謝金,得られた成果の論文投稿費として使用する。
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Research Products
(1 results)