2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K03002
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
坪見 博之 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (70447986)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 記憶 / 知覚 / ワーキングメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
ワーキングメモリの重要な機能は、記憶と現在の知覚を比較照合し差異や同一性を認識することである。しかし、比較照合が実際にどのように行われるかはほとんど明らかにされていない。従来の説明では「物体の全体的な類似性が高いほど比較照合が容易になる」と想定されてきた。例えばワーキングメモリに赤い丸を記憶すると、形が同じ丸の色と比較照合がしやすいと想定される。しかし予備的に検討した所、むしろ形が違う四角形の色と比較照合する方が成績が高くなった。この結果は「物体のある側面(形)の類似性が高いとかえって別の側面(色)の比較照合が困難になる」ことを新たに示している。そこで本研究では予備実験を発展させ、この現象を引き起こす「要因」と「プロセス」を検討することで、記憶と知覚の比較照合過程を明らかにすることを目的とする。 本年度は、記憶と知覚の比較照合に影響する要因を明らかにする実験を進めた。すでに行った予備実験を元に、記憶とテストの「形」の違いが「色」の比較照合に影響するかを明らかにするための実験を大学生70人を対象におこなった、実験では、ワーキングメモリ課題として複数の丸の色を記憶してもらった。このときさまざまな形のテスト刺激を用意し、丸との違いが大きいテスト刺激ほど「色」の比較成績が高くなるかを検討した。その結果、やはり「色」を覚えたときに、記憶とテストの「形」が違うとテスト成績が高くなることが示された。このことから、比較照合過程においては、比較する特徴次元以外の次元が影響することを明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに実験を開始し、70名の大学生を対象に2つの実験を行い、予備的に見出していた現象を確認することができた。そのため研究は概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、記憶と知覚の比較照合に影響する要因を明らかにする。そのために、本年度行った実験を発展させ、記憶とテストのどのような形の違いが色の比較照合に影響するかを更に明らかにする実験を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
研究支援員の雇用がやや遅れたため、次年度使用額が発生した。また、国際学会参加のための旅費が高騰していることから学会発表を次年度に見送った。次年度は年度初めから雇用し実験を進めるので研究試験員の雇用と、学会発表の旅費に充てる予定である。
|