2023 Fiscal Year Research-status Report
共行為における自己関連刺激処理のメカニズム:事象関連電位による検討
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23K03008
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
加藤 公子 愛知淑徳大学, 心理学部, 教授 (80530716)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 自己優先性効果 / 事象関連電位 / 注意資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自己に関連する情報は優先的に処理されるとする自己優先性効果が,他者と共に課題を遂行することで高められるのかについて,事象関連電位(ERP)を用いて検討することを目的とした。特に,自己優先性効果を注意資源の配分の観点で捉えることとした。 当該年度は,呈示刺激が自己に関連するものか,他者に関連するものか,あるいは誰とも関連しないのかという関連性を確立する符号化段階およびそれに基づく検索段階における注意資源の配分について,1人で課題を遂行する個人条件の実験を行った。この実験はこの先続く,他者との課題遂行における自己優先性効果を検討する上での基準となる重要な実験である。 実験では,3種のカテゴリに属する名詞を使用した。1つは参加者に割り当てる自己関連刺激,1つは参加者が思い浮かべた友人に割り当てる他者関連刺激,残る1つは誰にも割り当てない無関連刺激とした。画面上に単語がランダムに呈示され,参加者には単語が自己に割り当てられたカテゴリに属するかどうかの二者択一判断を要求し,ボタン押し反応を求めた。この間のERPを記録したところ,自己関連刺激はそれ以外の刺激に比べてより大きなP3bを誘発した。このP3bの大きさは注意資源の配分量を反映する。つまり,自己関連刺激はそれ以外の刺激に比べて注意資源の配分が優勢であったことを示した。さらに,この判断課題の後に実施した単語再生テストでは,自己関連刺激が他の刺激よりも正再生率が高いことが認められた。 さらに,上記3種の刺激にターゲットを加えた4種類の刺激を画面上にランダムに呈示し,参加者にはターゲットの呈示回数を数える課題を実施した。P3b振幅は,ターゲット呈示時に最大となり,続いて,自己関連刺激が呈示された時に大きくなった。自己に割り当てられた刺激であるという認識が検索時においても注意資源の配分に影響することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で検討する自己優先性効果は,これまで行動指標を用いた研究が主であった。本研究はこれを事象関連電位を用いることで,行動出力以前の情報処理過程における脳活動から詳細な検討をすることとした。そこでまずは1人で課題を遂行するという従来の自己優先性効果の研究に沿う形で実験を実施し,行動指標並びに事象関連電位のP3b成分に注目して,自己優先性効果が確認できるかを検討した。その結果,両指標から自己優先性効果を見出すことができた。この成果は当初の目的である,他者との課題遂行における自己優先性効果の検討の基礎となる。この成果をもって計画通り研究を遂行することが可能であり,本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ,今後の研究は,他者との課題遂行事態を設定し,その中で自己優先性効果について検討していく。個人条件で行った実験を,他者と2人で実施し,符号化時,および検索時における自己関連刺激に対する注意資源の配分に注目する。ここから個人条件よりも共有条件で自己優先性効果が高まるのかについて検討する。加えて,他者刺激に対する注意資源の配分も確認し,共行為研究で報告されるパートナーとの共表象についても検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の発生は,当該年度に行った実験に関して,それを遂行する上で必要な機材等が十分整っていたため,物品費の使用が予定よりも少額で済んだことに由来する。次年度以降は実験を複数計画しており,実験参加者謝礼,実験協力者謝金にかかる費用が多くなると考える。さらに,研究成果の発表に向け,英文校閲や論文投稿料が必要となると考えている。
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