2023 Fiscal Year Research-status Report
Deformation on equivariant completions of vector groups into Fano varieties and K-stability
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23K03047
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
岸本 崇 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20372576)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ベクトル群 / 同変埋め込み / Fano多様体 / del Pezzoファイブレーション / 森ファイバー空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では,研究課題に関して大きな進展があった.研究課題は大雑把に述べると,(1)「Fano多様体へのベクトル群の同変埋め込み」と,そこでの考察を踏まえての(2)「Fano多様体のK-安定性」の観察である.当該年度は主に(1)に関する研究を遂行した.より正確には,(1)を2つの方向に一般化した問題を考えた.1つは,(a)「ベクトル群のdel Pezzoファイブレーションへの"同変"とは限らない埋め込み」を分類することであり,もう1つは(b)「ベクトル群の一般の森ファイバー空間への同変埋め込み」を分類することである. (a)については,Adrien Duboulozと長岡大氏との共同研究により,ある意味では分類を満足いく形で完了させることが出来た.特筆すべきは,これまでは例が1つも構成されていなかった次数6のdel Pezzoファイブレーションへの埋め込みを,今回の共同研究では系統的に構成することに成功したことである.この進展は予想外であった.実際に,次数6以外のdel Pezzoファイブレーションの場合には,双有理幾何学の議論で(a)の問題を考えることが出来たが,次数6に限っては双有理幾何学の理論の適用だけではどうしても構成出来ないからである.より正確には"アフィン修正"なる別の幾何学の理論の適用も必要になってくる.これらの分類結果は既に"Annali dell' Universita di Ferrara"にアクセプト済み,掲載決定である. (b)については,Adrien DuboulozとPedro Monteroとの共同研究で,当該年度の後半からプロジェクトを開始した.両氏とは約4年前に,(b)の前段階となるプロジェクトを立ち上げ,2年程の研究期間を経て完成させて,対応する論文は"Algebraic Geometry"に掲載決定しているので,今回のその続編とも言えるプロジェクトについても今後の進展が十分に期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
『研究実績の概要』でも述べたように,ベクトル群の"同変ではない"埋め込みは,"同変"な埋め込みと比較するとその埋め込み状況は飛躍的に複雑になる為,その構成・分類は経験的に一般には極めて困難である.そのような経験則から,当初はベクトル群の同変ではない埋め込みの構成は,無謀であろうと半ば諦めていた.特に次数6のdel Pezzoファイブレーションへの埋め込みは,存在するとすれば自動的に同変ではないことは分かってはいたが,そもそもそのような埋め込みが1つでも存在するかどうかが最大の問題であった.何回も構成を試みたが,次数6のdel Pezzoファイブレーションへの同変埋め込みは構成できなかったので,当初は非存在性を証明しようとしていた程である.しかし幸運なことにひょんなことから,偶然にも1つの例を構成することに成功した.この例は双有理幾何学の手法だけでは構成できず,"アフィン修正"なるアフィン代数幾何学の理論を適用する必要がある.この1つの例を注意深く観察することにより,次数6のdel Pezzoファイブレーションへのベクトル群の非同変埋め込みの族を無限個構成する系統的な手法を編み出すことに成功した.これは当初予想していなかった結果である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の今後の推進の為の方策であるが,『研究実績の概要』の項目で述べた(1)の(b)についての考察を,Adrien DuboulozとPedro Monteroとの共同研究として引き続き遂行をしていく.対面での直接的な議論に勝るものはないので,今年の9月辺りに,研究代表者(岸本)がDuboulozの所属するUniversite de Bourgogne, Universite de Poitiersに2週間から1ヶ月の期間,滞在する.丁度その期間,Monteroも同大学を訪問しているので,3人による(1)-(b)に関する共同研究は効率的に進展することが期待出来る.(1)-(b)の研究が順調に進めば,そこでの考察・結果は(2)の問題への応用も期待出来る.実際に,ベクトル群の森ファイバー空間への同変埋め込みが分類・理解出来た後,それら森ファイバー空間の中でFano多様体になっているものに焦点を当てる.ベクトル群の同変埋め込みになっているということから,対応する自己同型群が簡約群になっていないケースも十分に起こり得る.その場合には,注目しているFano多様体はK-安定的でないことは一般論により判定出来る.問題はベクトル群の同変埋め込みになっているにもかかわらず,K-安定的なFano多様体をどう見つけるかである.勿論,射影空間や非特異2次超曲面などそのような例は存在はするが,どの程度存在するのかについては未だ知られていない.(1)-(b)の考察が十分に遂行出来ている場合には,(2)の問題で取り扱うべきFano多様体は明示的に記述出来ていると思われるので,(2)の問題をある意味,シラミつぶし的に進めることを考えている.
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Causes of Carryover |
今年度(令和6年度)は,国際研究集会を例年より多く実施予定である.昨今の円安傾向もあり,海外のゲストを招待する際に航空運賃などの経費が大きく負担になることが予想されることから,前年度の科研費の使用を若干抑えた.
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Research Products
(8 results)