2023 Fiscal Year Research-status Report
Re-examination of classical problems in low-dimensional topology from higher invariants
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23K03110
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 哲也 京都大学, 理学研究科, 教授 (00710790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 知忠 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (50223871)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | デーン手術 / 矯飾的手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
結び目・低次元トポロジーの古典的な課題であるデーン手術について研究を行った。結び目の鏡像的な矯飾的手術(二つの異なるデーン手術で向きが逆の同じ三次元多様体が現れるような手術)について、以前の研究で得られていたLMO不変量の二次の項から現れる障害及びHeegaard Floer理論から現れる障害、そしてCasson不変量や符号数といった古典的な不変量から現れる制約を組み合わせることで、正二橋結び目の鏡像的な矯飾的手術は知られている(2,p)トーラス結び目のものしかないことを証明した。
また、より一般に三次元多様体内の結び目の手術により、元の三次元多様体と向きが逆にになるものについての考察を行った。LMO不変量の手術公式の系として得られるCasson-Walker不変量の絡み目に関する有理手術公式を適用することで、このような手術の障害を得た。その系として、(2,9)トーラス結び目の鏡像を生み出すようなバンド手術の非存在を示した。 (2,k)トーラス結び目の鏡像を生み出すようなバンド手術については先行研究でk=5,9以外には存在しないことが知られ、実際にk=5の時には存在することが知られていたが、k=9の時は未解決問題であった。最近になり、Heegaard Floer homologyの精密な議論によりk=9の非存在が示されたが、今回の結果はより簡明な証明を与えるものとなっている。 Casson-Walker不変量のような、基本的ともいえる不変量が難解なHeegaard Floer理論の議論で示されたことがらの別証明を与えるということは驚きである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次の不変量の応用を考えることを目標としているが、現在までのところはCasson-Walker不変量などの古典的な低次の不変量の応用を与えることや、以前の研究で得られた高次の不変量の公式を利用する段階にとどまり、当初の目標はまだ達成できていない。
一方で、これまで盛んに研究され、利用されていた不変量を用いて、想定よりも強力な結果を示すことができたこと自体は十分に意義がある。低次の不変量の応用を開拓することは、その不変量の持つ情報とその限界、そして高次の不変量を考えるべき点や利点を明確にするという意味で本研究課題の観点から見ても進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた結果や、関連した手法の議論を高次の不変量を利用しさらに精密化するすることを考える。特に、高次の不変量はHeegaard Floer理論から現れる不変量とは独立のため、Heegaard Floer理論でとらえられない部分への活用を考察していく。今後の研究のため、LMO不変量などの公式を具体的な計算や応用に使えるようなより簡明で明示的な式として書き下す作業や計算を行い、応用のための道具や理論の整備を行っていきたい。
また、結び目理論や低次元トポロジーの古典的な問題、特にデーン手術に関連した問題については先行研究やその手法の調査を進め、現在の理論や結果の視点から理解を進めることで、高次の不変量を具体的に適用することに適した問題や技法を開拓する。
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Causes of Carryover |
研究初年度のため、当該研究に関連する研究成果の発表等のための出張を行わなかった。また、継続課題の延長にともなる研究費による支出を優先したこと、本研究費による参加予定の集会についてオンライン参加等旅費を使用しない参加形態としたため。
今年度からはより積極的に対面での研究集会に参加し研究発表等を行うとともに、セミナーや研究討論のための研究者の招聘等を行っていく。
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