2023 Fiscal Year Research-status Report
転送作用素の固有空間摂動解析による準安定状態検出問題の研究
Project/Area Number |
23K03134
|
Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
田中 晴喜 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (60648567)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 転送作用素 / 擬コンパクト / 準安定系 / 反復関数系 / 漸近摂動 / ビリヤード力学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度前半は,本研究課題の基礎理論構築のための研究を行った.具体的には,可算状態をもつマルコフシフトにおいて,2-シリンダーの和集合をホール(hole)にもつような転送作用素の擬コンパクト性と周辺固有値の固有空間の詳細構造について調べ結果を論文として発表した([T. '24 出版予定]).特に,閉システム(ホールを開ける前のシステム)は位相推移的であり,オープンシステム(ホールを開けたシステム)は可算個の推移的コンポーネントをもつような設定をしている.これは将来,可算状態をもつ摂動マルコフシステムを考えるうえで,任意の推移確率を0にもっていけるような設定を可能にする重要なポイントである.令和5年度後半は,将来適用できるような応用問題として,無限グラフ構造をもつ反復関数系と可算個の障害物をもつ食をもたないビリヤード力学系について考察した.無限グラフ構造をもつ反復関数系については,縮小写像が定義される空間の一般化と次元公式の考察,共形性を仮定しない場合の次元の漸近挙動,及び,次元を漸近展開した場合の係数の統計的性質を調べるための基礎研究など,多角的な研究をおこない成果発表をおこなった(計8件の発表).加えて,可算個の強連結成分に分裂するような摂動グラフ反復関数系の次元の挙動について研究を行いプレプリントを作成した.ビリヤード力学系については,可算状態をもつマルコフシフトとの1対1の関連付けについてと,ゼータ関数のオイラー表示について研究を行い,研究集会「ランダム力学系とエルゴード理論」での報告及び論文発表[T. '24 出版予定]をおこなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の基礎理論構築のために必要となる可算マルコフシフトのホール(hole)と結びつく転送作用素のスペクトル構造について調べ,おおむねよい結果が得られたこと,及び,無限グラフ構造をもつ反復関数系が可算個の強連結成分に分裂するような摂動の定式化と次元の連続性が得られプレプリント「Perturbed infinite graph-directed iterated function systems with degeneration」を作成できたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
過去に与えた有限状態をもつ摂動マルコフシステムに関する結果[T. '20]を可算状態をもつ場合に一般化し,Gibbs測度の収束性及び最大固有値の周辺にある固有値のスペクトル構造についての考察をおこなう.その際,有限状態の場合では起こらなかった困難な問題がありそれに対処する必要がある.具体的には,有限状態の場合には摂動のパラメータを十分小さくすれば各準安定系が安定系に近づくが,可算無限状態をもつ場合は準安定系内に任意に小さい遷移確率があるため,いくら摂動パラメータを小さくとっても準安定系が安定系に近づかない問題が起こり得る.有限状態の場合と同様の結果を得るためには記号構造とポテンシャルに何等かの強い条件を課す必要があるが,そのための研究を行う.これらの研究に並行して,応用に関係する研究を令和5年度から引き続きおこなう.得られた結果の発表と論文作成をおこなう.
|
Causes of Carryover |
物品価格と旅費が想定とは異なったため次年度使用が多少生じたが,基本的には計画通りである.
|