2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of recurrent waves in structured epidemic models
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23K03214
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
國谷 紀良 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (60713013)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 感染症 / 数理モデル / 基本再生産数 / 年齢構造 / 空間構造 / 時間遅れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,集団に属する各個体の年齢や居住地などの異質性を考慮できる構造化感染症モデルを用いて,様々な感染症に見られる再帰的な流行のメカニズムを解明することを目的としている.本年度は,再帰的な流行を意味する周期解の存在に関する未解決問題が残されている年齢構造化SIRモデルと呼ばれる感染症モデルに焦点を当てた.同モデルに対して,流行強度の指標である基本再生産数Roが1より大きい場合に,感染症が風土病として定着する状況を意味するエンデミックな平衡解の存在と安定性を調べた.結果として,エンデミックな平衡解が不安定化して周期解が発生するホップ分岐が起こるための十分条件を得た.具体的に,感染者の年齢に依存する感染率が切断指数分布で与えられる場合に,エンデミックな平衡解における感染力と除去率の値が等しいか十分近いならば,ホップ分岐が起こる可能性があることを示した.この結果は,1990年代から研究されてきた同モデルのエンデミックな平衡解の安定性に関する未解決問題に対する新たな貢献となるものであった.その他,周期解に関する結果ではないが,関連する感染症モデルの解析結果として,年齢構造と空間構造をもつマラリアのモデルの大域安定性解析,時間遅れと免疫保持期間を考慮したSEIRモデルの大域安定性解析,再感染を考慮したSEIモデルに対する潜伏期人口と感染人口の分布を推定するためのオブザーバー設計といった各種問題に,共同研究者らとともに取り組んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年齢構造がもたらす周期解については結果が得られたが,その他に研究計画書に記載していた季節性,ウイルス変異,空間構造,行動変容などの要因が周期解をもたらす可能性については新たな結果が得られていないため.また,本年度の結果はモデルの数学的解析に関するものが中心であり,実際のデータに基づく疫学的考察については十分研究を進められていないため.
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Strategy for Future Research Activity |
科研費により購入した日本国内における人流のデータを活用することで,より現実に即した空間構造化モデルを構築し,そのモデルにおける再帰的な流行の発生の可能性について調べる.また,季節性,ウイルス変異,行動変容などの他の要因を考慮したモデルについて,数学的性質の解析およびデータの収集と疫学的考察を進める.
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