2023 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis and search for superconductivity of ternary hydrogen compounds with fluorite-type structure
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23K03301
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
榮永 茉利 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (70709899)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 圧力誘起超伝導 / 高温高圧合成 / 水素化合物 / 放射光粉末X線回折 / 電気抵抗測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来の水素化物超伝導体比べて低い圧力(P<100 GPa)で高温超伝導(Tc>100 K)の発現が期待される、新しいクラスである蛍石型構造をもつ3元系水素化物の合成と超伝導の発見を目指す。本年度は予測された水素化物のうちCaBH8の合成を試みた。 CaBH8は出発物質として、モル比1:1のCaH2とCa(BH4)2をアルゴン雰囲気下でボールミルした混合物を、水素供給源であるアンモニアボランとともに電極入り圧力セルに封入し、電気抵抗・放射光XRD測定を行いながら140 GPaまで加圧した。CaH2は20 GPaで結晶構造相転移が観測されたが、それ以上の圧力では構造に変化はなった。Ca(BH4)2はCaH2に比べてX線回折強度が低いためXRDパターンが観測できなかったが、試料の電気抵抗は50-60 GPaでは大きく減少し、試料の色も暗褐色に変化した。140 GPaで赤外レーザー加熱を行うと、CaH2のピーク強度が減少し、新たにfcc構造およびCaH6と思われるbcc構造で説明できるピークが表れた。加熱前後で電気抵抗に変化はなく、この圧力で電気抵抗の温度依存性を測定したが、超伝導は観測されなかった。 他にも、出発物質として単体CaとBの混合物について、100-150 GPaの圧力範囲に置いて赤外レーザー加熱をおこない水素化を狙ったが、金属化や超伝導を示すような水素化物の合成には成功していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年8月1日から2024年3月22日まで産前産後休業および育児休業期間であった. また、7月までは妊娠期間中であったため、通常より研究に充てられる時間を確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で新たに発見されたfcc相に関して詳細な解析を行い、結晶構造を決定する。また、CaH6については、140 GPaでは超伝導となることが報告されているが、昨年度の実験では観測されなかった。そのため、再度CaBH8の合成および超伝導探索をおこなう。 目的の物質のひとつである蛍石型構造をもつ3元系水素化物のLaBeH8については、別のグループによって80 GPaでTc~110 Kが報告された。この物質で同じ圧力において理論的に予想されたTc = 166~192 Kよりも低いが、液体窒素の沸点を超える高い温度であると言える。この水素化物は化学量論組成のLa-Be合金を水素化することで得られている。合成の圧力温度条件は150 GPa・2000 K程度であり、合成後の減圧過程でTcが上昇していく。報告では80 GPa以下ではアンビルの破壊および電極の破断により測定ができなくなったことから、さらに低い圧力では、より高いTcが期待される。このことから、報告されたLaBeH8のみならず、その他の目的物質であるLaBH8やCaBH8についても比較的低い圧力で比較的高いTcが期待できる。そのためには、圧力を発生させるために応力を受けて変形したアンビルが、減圧過程において戻ることで破壊してしまう問題を解決する。 平行して、LaBeH8以外の目的物質についても100 GPaを大きく下回る低い圧力で超伝導を示す物質を探索し、高圧中性子回折実験によってこれまで不可能であった水素化物中の水素原子位置を世界に先駆けて決定する。
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Causes of Carryover |
2023年8月1日から産前休暇を取得する予定となり、物品の納期が産前休暇前に間に合わなかったため。
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