2023 Fiscal Year Research-status Report
Structure and rheology of complex particle suspensions
Project/Area Number |
23K03343
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
名嘉山 祥也 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10422982)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 粘弾性流体 / 複雑流体 / 分散系 / レオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子溶液に分散した微粒子分散系のブラウン運動の直接数値計算について検討した.流体力学を考慮した微粒子ブラウン運動の直接数値計算は,従来単純液体を想定したニュートン流体を分散媒とした系の研究が中心であった.一方で,流体の粘弾性を考慮したブラウン運動の直接数値計算はわずかしか取り組みがなかった.非平衡熱力学と粘弾性構成方程式にもとづいて,流体の熱ゆらぎを物理的にコンシステントの解く直接数値計算の開発に取り組んだ.熱ゆらぎに駆動される粘弾性流れを解くには,単純流体の場合でも考慮されている運動量輸送におけるランダム応力を考慮するだけでなく,流体の弾性自由度にたいするランダム力を考慮する必要がある.そのために熱力学的にコンシステントな揺動粘弾性流体の枠組みにもとづく直接数値計算の実装の取り組みをすすめている. 粘弾性流体中に分散した自己駆動粒子の運動を解析する直接数値計算の開発を行った.自己駆動粒子は自らの周囲に流れを誘起して自発的推進する.流体の粘弾性は,自己駆動粒子の過渡的挙動と定常状態の速度の両方に影響を与えることを見出した.自己駆動粒子がつくる粒子回りの旋回流があると遊泳速度が大幅に向上することを見出した.旋回流は粒子周囲の流体を伸長し,弾性応力を誘起する.この効果が粒子の前後で非対称であることによって,遊泳速度を大きく変調する.また,液体の弾性成分と粘性成分の混合比によって,遊泳速度変調の効果が変化し,最適な粘弾性流体があることが示唆された.これらの知見は,複雑流体において遊泳する微生物などの挙動を理解する上で重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の一部を行い,査読あり研究論文4報を学術誌に発表した.また10件の学会発表(うち国際学会6件)を行い,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
粘弾性流体中のコロイド粒子の拡散を検討する.媒質の熱ゆらぎを駆動力とする微粒子のブラウン運動を解析し,媒質の粘弾性レオロジー特性とブラウン運動の平均自乗変位の関係を明らかにする.さらに,非平衡粒子構造形成下のレオロジーと拡散の関係に基づくレオロジー解析の可能性について検討する.溶媒分子の熱ゆらぎによるコロイド粒子のブラウン運動は,流体力学的相互作用による長時間相関(流体力学的メモリー)と,媒質の粘弾性による緩和過程(弾性メモリー)の影響を直接反映する.両者のタイムスケールは同程度であるため,これらの間の相互作用がどのようになるか,そして複雑流体中の拡散は媒質レオロジーにどのように依存するか,について検討する.本検討を行うために,媒質の粘弾性流体に,粘性応力だけでなく複雑流体の内部構造についての揺動散逸定理を満たすような熱ゆらぎの実装を開発し,複雑流体中の熱ゆらぎを駆動力としたブラウン運動の直接数値計算の開発を行う.非平衡粒子構造形成下では,ブラウン運動は秩序構造に拘束を受けつつ非等方になる.この場合におけるブラウン運動とその解析から分散系レオロジーを推定することを検討する.
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