2023 Fiscal Year Research-status Report
Various aspects of correlations in the quark-gluon plasma
Project/Area Number |
23K03386
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅川 正之 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (50283453)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | クォークグルーオンプラズマ / 強い相互作用 / QCD臨界点 / 相関 / 揺らぎ / 重クォーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)の相図上に有限温度有限密度で存在すると考えられている臨界点近傍で、チャームクォークなど重いクォークが受ける抗力を考察した。この臨界点は強い相互作用の軽いクォークセクターが近似的に持つカイラル対称性に関連した相転移点である。チャームクォークなどの重いクォークは、カイラル対称性は持たないが軽いクォークと同じゲージ相互作用を受けるという、他の系で類似を見出しにくい特徴を持った不純物として振る舞う。もしこの抗力が臨界点近傍での揺らぎと相関の発散の結果増大すれば、高エネルギー原子核衝突で生じた重いクォークの拡散が抑制され、臨界点の存在の証拠となり得る。この抗力の臨界点付近での振る舞いをQCD臨界点が属すると考えられているmodel Hにおいて計算した。その結果、model Hにおいて知られている臨界指数を用いた場合、残念ながら臨界点近傍での抗力の増加は微小で実験では殆ど確認できないような程度に留まることが分かった。しかし、model Bで同様な計算を行った場合は、臨界点近傍での発散度は顕著で、実験で確認し得ることが分かった。原子分子系でこれに類似のシステムを見い出し、臨界点近傍での不純物の抗力を実験的に測定して、この結果を確認することは興味深いことであると考えられる。 また、本年度はクォークグルーオンプラズマの微視的構造を格子ゲージ計算を行ってクォークグルーオンプラズマ中でのクォーク数の相関を測定することを通して理解するため、コードの整備を行い、またそれを用いて予備的な計算を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
QCD臨界点付近で重いクォークの受ける抗力の臨界指数を計算できたことは新しい成果である。また、フルQCD格子ゲージ計算を、予備的とは言え実行できたことは、大きな一歩であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、格子ゲージシミュレーションの本計算を行うべくコードの整備を進める。さらに、QCD臨界点付近の相関の指標としてレプトン対を通じて、バリオン数とは違う側面からクォークグルーオンプラズマ中の相関を探る。
|
Causes of Carryover |
本年度は物品費の支出が予定よりやや多かったが、総計はほぼ予定通りであり、次年度使用額は880円と本年度交付額の0.1%に満たない。これは、使用計画の誤差の範囲であると考えられ、次年度は通常通り予算の執行を行う予定である。
|