2023 Fiscal Year Research-status Report
Studies of five-dimensional supersymmetric gauge theories from web diagrams which characterize Calabi-Yau spaces
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23K03396
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
林 博貴 東海大学, 理学部, 准教授 (10780273)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 超対称性理論 / Seiberg-Witten曲線 / Gopakumar-Vafa不変量 / 超対称指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カラビ-ヤウ空間を特徴づけるウェブ図を用いて、より多くの種類の5次元/6次元超対称性理論を実現すること、そしてそのウェブ図を用いてその5次元/6次元超対称性理論の物理量と関連する物理的対象を求めることを目的としている。そのような物理的対象の一つとしてSeiberg-Witten曲線(以後、SW曲線)と呼ばれるものがある。本研究の目的を達成するためにも、より標準的なブレーンウェブの図からSW曲線を導出することは重要である。これまで、O7+という種類のオリエンティフォールドを含むブレーンウェブの図から、そのブレーンウェブ上で実現される5次元超対称性理論のSW曲線を求める方法は与えられていなかった。2023年度に行った研究により、O7+を含むブレーンウェブの図からSW曲線を求める手法を提唱した。この内容はすでに学術雑誌から出版済みである。
また、カラビ-ヤウ空間として楕円ファイバーを持つものを考えると、そのカラビ-ヤウ空間は6次元超対称性理論と関係している。2023年度に行った別の研究では、6次元超重力理論に存在する弦の楕円種数の一般的なansatzを提唱した。このansatzといくつかのGopakumar-Vafa不変量をinputデータとして用いることで、楕円ファイバーを持つカラビ-ヤウ空間における多くのGopakumar-Vafa不変量を求めることができる。この内容はarXivにおいて発表済みである。
他にも、3次元超対称指数の研究も2023年度も引き続き進めた。2023年度は、M2ブレーン上の3次元超対称性理論においてM2ブレーンの枚数が非常に多いときの超対称指数に着目し、超対称性を部分的に保つような局所演算子のある種の縮退度が漸近的にどのように振る舞うかを解析した。この内容は学術雑誌に投稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、カラビ-ヤウ空間を特徴づけるウェブ図、特にトーリックという種類のカラビ-ヤウ空間に対応する図を3つないしは4つ組み合わせたものを含むウェブ図を用いた5次元/6次元超対称性理論の解析の発展を目指している。2023年度の研究では、そのようなウェブ図自体を扱う研究成果は発表することができなかった。しかしながら、別の手法により5次元/6次元超対称性理論の解析を発展させることには成功した。一つがO7+という種類のオリエンティフォールドを含むブレーンウェブの図からSW曲線を求める手法の確立、もう一つが6次元超重力理論中の弦の楕円種数のより一般的なansatzの提唱である。研究を進めていく上で、ある対象を多角的に理解することは重要である。よって、これらの別手法による5次元/6次元超対称性理論の理解の発展により、ウェブ図を用いた解析の発展に将来的に役立つ可能性を期待している。
また、5次元/6次元以外の次元として、3次元超対称性理論の研究も進展させることができた。2023年度は3次元超対称性理論を実現するM2ブレーンの枚数が多い場合にも着目したが、このような状況はホログラフィック原理に基づいた解析でよく用いられている状況とも関連があり、研究の方向性をより広げられる可能性を秘めている。
従って、トーリックなカラビ-ヤウ空間に対応する図を3つないしは4つ組み合わせたものを含むウェブ図自体を用いた研究成果を発表することはできなかったが、別の手法による解析を発展させることには成功し、また3次元理論の研究でも新たな方向性につながる可能性のある成果を発表できた。そのため、総合的にはやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は当初の計画にもある、トーリックという種類のカラビ-ヤウ空間に対応する図を3つないしは4つ組み合わせたものを含むウェブ図を用いた解析を行っていきたい。特に、6次元超共形場理論をコンパクト化して得られる5次元超対称性理論のうち、まだウェブ図で実現されていないものがあるため、まずはそのような理論でウェブ図により実現できるものがあるかどうかを調べる。そして、そのようなウェブ図を得た後は、物理的対象の一つである5次元超対称性理論のネクラソフ分配関数をウェブ図を用いて計算していきたい。このとき、6次元超共形場理論をコンパクト化して得られる5次元超対称性理論を考えているため、その5次元理論のネクラソフ分配関数は、対応する6次元理論中の弦の楕円種数とも関係している。よって、この計算により、6次元超共形場理論の物理量を得ることにもつながることになる。
また、2023年度に行った、ansatzを基にした6次元超重力理論中の弦の楕円種数の計算もさらに発展させることを考えている。この計算手法は、ウェブ図を用いた計算手法とは独立な方法ではあるが、ウェブ図とは異なる計算手法を発展させることで、将来的にはその知見をウェブ図を用いた計算手法の発展にも活用していきたい。他にも、M2ブレーン上で実現される3次元超対称性理論の超対称指数の研究もさらに進めていくことを考えている。その際には、2023年度に引き続いて、M2ブレーンの枚数が多い状況にも着目していきたい。
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Causes of Carryover |
本研究では、研究会に参加したり、共同研究者の研究所を訪問したりする際の旅費が主な使用用途である。しかし、2023年度は訪問先から旅費の補助をいただく機会があり、また、参加することを考えていた国際研究会の日程と授業日程が重なり参加できなくなってしまうことで、予定よりも旅費としての支出が減り、次年度使用額が生まれた。2024年度の使用計画としても、当初の目的通り、本研究をより効果的に進めるために、研究会の参加や共同研究者の研究所に滞在するための旅費として、有効に活用していきたい。
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