2023 Fiscal Year Research-status Report
Tests of extended gravitational theories based on gravitational wave observations
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23K03421
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
加瀬 竜太郎 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 准教授 (10756406)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ブラックホール / 中性子星 / 重力波 / ブラックホールシャドウ / 拡張重力理論 / 修正重力理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は近年発展の著しい重力波観測のデータを用いて,一般相対論とそれを拡張した重力理論の検証を行い,真に正しい重力理論を選別することを目的とする.また,重力波以外にも,ブラックホールシャドウのような強重力領域が関わる物理現象を介した重力理論の選別手法の模索を同時並行で行なっていく. 上記の目的に沿って,2023年度はスカラー自由度やベクトル自由度が導入された理論におけるブラックホール解についての研究を行った.1) スカラー自由度を導入した重力理論であるHorndeski理論に関して,ベクトル自由度によって記述される電磁場とスカラー自由度の最も簡潔な結合を導入したHorndesk-Maxwell理論に基づいたブラックホール摂動論についての研究を行った.次に,2) 前述のスカラー自由度とベクトル自由度の結合をより一般化したScalar-Vector-Tensor(SVT)理論に関してブラックホール摂動論を展開し安定なブラックホール解が存在するために必要となる汎用的な条件を導いた.また,3) 帯電ブラックホールとして最もシンプルなReissner‐Nordstrom解についてブラックホールシャドウの観測データを用い,先行研究ではphoton ringに基づいた電荷への観測的制限が導かれているが,lensing ringに基づいて解析を行った場合にはこの制限が緩和されることを示した.更に,4) ここまでの研究では帯電ブラックホールを前提としていたが,SVT理論の最もシンプルなサブクラスに基づき,電荷ではなく磁荷を導入した場合には新規なブラックホール解が得られることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」について述べた1)-4)の研究については論文としてまとめ投稿済みである.1)については既にPHYSICAL REVIEW D誌に掲載されている.2)-4)については年度末から年度初めにかけて投稿しており,現在は査読プロセスにある.以上のことから,本研究課題は当初予定と比較しておおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として,第一にスカラー自由度やベクトル自由度を含む様々な重力理論に基づいてブラックホール摂動論を展開し,汎用性の高い理論的安定性条件を導くことで,安定なブラックホール解を持つことができる理論模型の選別を推し進めていく.現在観測されている重力波はブラックホールや中性子星の連星系の合体現象によって放出されたものであるため,まずは個々の理論が安定なブラックホール解を持つか否かを判別していくことが必要不可欠である.次のステップとして安定なブラックホール解を持つ理論に着目し,前段階で導いた摂動方程式を解析的・数値的に積分することでブラックホール準固有振動といった重力波に関わる可観測量を求め,最新の観測データと照合することで拡張重力理論の検証を推進する.一方,連星ブラックホールの合体の瞬間といった非線形性が強くなる領域はブラックホール摂動論の適用限界を超えており,実際に観測されている合体時に放出される重力波の波形との比較を行うためには数値相対論を用いた連星ブラックホールの合体シミュレーションが必要となる.今後確実に重要となる数値相対論分野について必要な知識をいち早く取り入れ環境を整えた上で開拓を行なっていく必要がある.他方,ブラックホールシャドウの観測データを用いた拡張重力理論に対する観測的制限は,重力波観測とは独立した制限を与えることから,今後観測の精度が上がるにつれより一層重要性を増していく.よって,このトピックについても引き続き研究を推進していく.
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Causes of Carryover |
初年度は現状の設備で行える研究が大半であり,また各研究トピックの完了が年度末に集中したため時期的に研究発表に関する旅費の支出等が発生せず,結果として次年度使用額が生じた.来年度以降の研究ではより複雑な摂動論を取り扱う必要がある.次年度使用額はそのような計算を実行可能なスペックを持った計算機の導入や研究発表のための旅費として使用予定である.
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