2023 Fiscal Year Research-status Report
琵琶湖深部湖底における湧水・メタンの形成機構と同湧水が環境に与える影響の評価
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23K03494
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
小泉 尚嗣 滋賀県立大学, その他部局等, 副学長 (00215154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山野 誠 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (60191368)
角皆 潤 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50313367)
笠谷 貴史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), センター長代理 (90373456)
後藤 慎平 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (90772939)
岸 和央 立正大学, 環境科学研究所, 客員研究員 (40802468)
細井 祥子 (田辺祥子) 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80423226)
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (80275156)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ガス音響異常 / メタン / 溶存酸素 / 高熱流量異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
・高島市沖で(深部湖底湧水に伴うと考えられる)ガス音響異常が広範囲に分布することを確認した。分布の仕方に特に規則性は見られないが、現時点では、湖底深度が60mを越えるところに分布している。同湧水は、湖底付近の水質に大きな影響は与えないものの、琵琶湖最深部付近の湧水場所(Y1)の湖底では,溶存酸素濃度を若干低くする影響を与えている可能性がある。Y1直上の湖面で採集したガスの主成分はメタンであり、湖底堆積物中に広く見られているメタンと同位体組成の特徴がほぼ一致した。 ・湧水活動に伴う高熱流量異常が継続していることを確認した。2022年10月~2023年3月に得た約170日間のデータから、湖底水温変動の伝播は伝導のみによるとして堆積物の熱拡散率を求めると、異常に高い値となった。この結果は、堆積物中を流体が下向きに動いていることを示唆している。湧水地点で単純に湖底から上向きに水がでているだけでなく下向きの水流もあり得ることを示していて興味深い。 ・2023年7月にH5近傍のT1の琵琶湖湖底および表層にて採水された水からDNAを抽出し、細菌・古細菌のメタゲノム解析を行った結果、両層ともにメタン生成菌の存在は見られず、2022年の結果とは異なった。 ・2023年の調査では、存在を確認できなかったが、2022年の調査では深部湖底にメタン生成菌が確認されたので深部湖底堆積物中にメタン生成菌はいるものとして、琵琶湖周囲の陸地に降った降水が地下水となって沈み込み、琵琶湖深部湖底の基盤を通して湧出しているというモデルを考えた。この場合、湧出する際に熱も供給するので、湖底堆積物中のメタン生成菌が活性化されてメタンが生成されていると考えれば、湧水とともにメタンが出ていることや、湧水場所の直上の湖面で採集されたメタンの同位体組成の特徴が、湖底堆積物中のメタンのそれと一致することが説明できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に大きなトラブルがなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査に用いていた滋賀県立大学の実習調査船:はっさかⅡの係留港の出口付近に土砂が堆積したため、2024年8月に予定されている浚渫が実施されるまで、はっさかⅡの出港が困難である。したがって、2024年8月までは、水中音波探査や湧水場所付近の水質調査やガス・湖水の採集ができない見込みである。2024年9月以降にできるだけ調査回数を増やして2024年度前半の調査の少なさをカバーして計画をすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は,一部の分担者が多忙で琵琶湖での調査・観測を行えなかったため次年度使用額が生じた.2024年度には調査・観測ができるので繰越額を使用できる予定である.
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Research Products
(2 results)