2023 Fiscal Year Research-status Report
火山ガス噴煙中二酸化硫黄可視化手法の高度化と噴煙中エアロゾル挙動の研究への展開
Project/Area Number |
23K03543
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 俊哉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40272463)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 火山ガス / 噴煙 / 二酸化硫黄 / 可視化 / エアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は火山噴煙中の二酸化硫黄の可視化手法を高度化し、エアロゾルの影響を取り除くことで、より信頼性の高い二酸化硫黄量の定量を行える観測手法の開発が目的である。まずは、二酸化硫黄可視化やエアロゾル情報抽出のために使用する紫外域に対応する高感度冷却CCDカメラのデモ機を借り、カメラの選定を行った。もともとの計画では3台の高感度冷却CCDカメラを購入して、3つの紫外域波長の画像を駆使することで目的とする二酸化硫黄可視化の高度化を目指していたが、このタイプのカメラを2台しか調達できない状況だったので、2台の高感度カメラでエアロゾル情報抽出したうえで、二酸化硫黄の可視化の高度化に結び付ける方法について検討した。検討の結果、既存の非冷却CCDカメラ2台の観測システムをばらし、3台同時に3波長で測定できる装置を新たに組み上げ、これを用いて新規購入した2台の高感度カメラでの測定を補助する方向で研究を進める方針にした。このため従来の観測用ソフトウェアを改良して、3つの非冷却CCDカメラ3台を同時に扱えるソフトウェアを作成し、桜島火山でこのソフトウェアの試験観測を実施し、3つの波長域での測定が可能であることを示した。また、3つのカメラで測定するため、視野方向を一致させる治具を新たに製作する準備をおこなった。 二酸化硫黄の可視化測定では、可視化により得られる二酸化硫黄量の校正には、二酸化硫黄を封入した石英ガラス製のガスセルを用いる。既存のガスセルの二酸化硫黄カラム量のレンジが限られているので、このガスセルの代替品となりうるような、吸収特性を持つガラスフィルターを調べ、観測時に代替品として使用できるかの評価を行った。最終的な結論は出ていないが、熱吸収フィルターが広い二酸化硫黄カラム量範囲での代替品として使用できる可能性が示された。熱吸収フィルターの使用方法については今後まとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
もともとの研究計画では高感度冷却CCDカメラを3台同時に動かすことで、本研究の課題を達成する予定であったが、高感度冷却CCDカメラが2台しか調達できない状況になったため、どのように研究を進めていくか再度検討するために予定外の時間を要した。また、補助的に使用する3台の非冷却CCDカメラで、どこまで測定ができるか明確するため、3台のカメラを同時に撮像するソフトウェアを従来の2台用のソフトウェアをベースに新たに作成し、試験測定するまでに時間が要した。これらの理由で、本格的な観測に至っていない状況であり、予定よりやや遅れいている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2台の高感度冷却CCDカメラを調達し、また、3つの非冷却CCDカメラによる測定の準備ができつつあるので、今後はこの2つの観測システムを組み合わせ、本研究課題が目標としている火山噴煙中の二酸化硫黄の可視化技術の高度化とエアロゾル情報の抽出に向けて研究を進めていく。まずは、非冷却CCDカメラ3台による測定システムをを確立し、火山噴煙の観測するとともに、目標とするエアロゾル情報の抽出にはどの波長帯のバンドパスフィルターを使用するのが適切なのかを検討していく。その後、高感度冷却CCDカメラ2台での測定システムをくみ上げ、最終的には5台のカメラを駆使しながら研究目的を達成する方向で進めていく予定である。また、火山噴煙中で二酸化硫黄の濃度やエアロゾルの測定ができる準備を進め、火山での可視化観測とサンプリング測定が同時にできる阿蘇火山および国内外の火山で観測を実施し、研究を遂行していく。
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Causes of Carryover |
もともとは高感度冷却CCDカメラを3台調達して本研究の課題を達成する予定であったが、3台調達してしまうと、カメラの調達だけで全費用を費やすレベルの費用しかなかったため、2台の高感度冷却カメラを調達した。調達するカメラの台数が3台から2台になったのが、次年度使用額が生じた理由の一つである。また、先述のように、高感度冷却CCDカメラ2台でどのように研究目的を達成するか検討したこと、既存の非冷却カメラを補助的に使用するための検討を行ったことなどで、全体としての計画がやや遅れたため、火山での本格的な観測に至らなかったことが次年度使用が生じたもう一つの理由である。もともとの研究計画とは異なり、観測の際に3台の非冷却CCDカメラと2台の高感度冷却CCDカメラの計5台のカメラを駆使して観測を行うことになったが、そのためには観測にかかわる物品(固定治具や三脚、PCなど)を別途調達する必要が出てくるため、そちらの方で次年度使用額を使用していく予定である。また、本課題では今後国外での観測や成果発表を予定している。しかし、昨今の海外旅費の高騰のため、実現が難しくなっているが、上記の額の一部はそちらを補填する方向で考えたい。
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