2023 Fiscal Year Research-status Report
Physics-informed deep learning approach for simulation and data assimilation of earthquake cycles
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23K03552
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
平原 和朗 香川大学, 四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構, 客員教授 (40165197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 真一 京都大学, 理学研究科, 教授 (00334285)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 物理深層学習 / 損失関数 / 速度状態依存摩擦則 / スロースリップ / バネ・スライダーモデル / 摩擦パラメータ推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である今年度では、まず地震サイクルの最も簡単なモデルである、1自由度のバネ・スライダーモデルに物理深層学習(PINNS : Physics-Informed Neural Network) を適用して、順問題の解法PINNモデルを構築した。速度状態依存摩擦(RSF)則に基づく、スロースリップ地震サイクル計算を行う、すべりの時間発展を求めるPINNモデルを作成して、通常の時間可変のルンゲクッタ数値積分法により得られたすべり時間発展時系列と比較して、十分な精度でスロースリップのすべりの時間発展を計算できることを確認した。その際、すべり速度と状態変数を全結合ニューラネットワーク(NN)で表し、準動的運動方程式とRSF則における状態発展を表す式を満たすように要請するLode(方程式損失関数)と初期条件を満たすように要請するLini(初期条件損失関数)を最適化して、NNの重みパラメータを求めているが、方程式の変数を無次元化(規格化)することにより、この2つの損失関数の重み係数無しで、最適化に成功している。また、損失関数の評価は評価点(collocation point)で行うが、損失関数の残差を見ながら一定間隔の評価点でどの程度細かく取るかも検討している。 上記は順問題であるが、更に逆問題として、ノイズを付加した合成すべり時系列データから、摩擦パラメータ推定を行ない、初期パラメータに寄らず、うまく摩擦パラメータを推定できることを示した。また、1サイクルの全期間データではなく、最大すべり速度を含む限られた期間からのデータから摩擦パラメータを推定し、それ以降のすべり発展の予測可能性を示した。 このようにPINNは順問題を扱うこともできるが、解法の速さの点ではこれは従来の数値解法に取って変わるものではない。むしろ、その最大の特徴は逆問題の解法にあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、PINNの応用として、一番単純なモデルである、バネ・スライダーモデルによるスロースリップのサイクル計算に取り組んだ。順問題としてのすべり発展の計算はある程度うまく行える見込みがあったが、2つの損失関数(方程式と初期値)の重みが大きく変わりその決定法に時間を費やした。試行錯誤の末、変数の無次元化(規格化)が鍵を握ることが判明し、これを行ったところ、重みを同じ1にすることで、この問題を解決した点が順調に進展した大きな要因と言える。 また、逆問題として摩擦パラメータの推定を行う開発にはかなり時間がかかると想定していたが、これはあまり大きな問題とならなったのも、おおむね順調に進展していると評価できる要因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、地震サイクルを扱う予定であったが、PINNによる地震時の高速すべりの計算は今のところ困難であると分かったため、スロースリップのサイクル計算に特化して開発を行うことにした。 初年度は簡単な1自由度のバネ・スライダーモデルでのPINNモデルを開発したが、次年度以降は、沈み込み帯をイメージした2次元断層モデルでのスロースリップサイクル計算および摩擦パラメータ推定・すべり発展予測(データ同化)を行うPINNモデルの開発に挑む。 Hirahara and Nishikiori(HN:2019)がアンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)を用いて摩擦パラメータを推定するのに用いた、円形パッチを持つ豊後水道長期的スロースリップ(LSSE)モデルを想定して、沈み込むプレート上に円形のLSSEパッチを持つ3次元モデルでのすべり発展計算および摩擦パラメータ推定・すべり発展予測を行うPINN手法の開発を行う予定である。 この際、すべりによる応力のやり取りを計算するすべり応答関数(媒質応答)はPINNにより計算することも可能だが、現状では計算時間がかかる。そこで、計算時間短縮のため、通常の一様媒質における解析解を用いて、断層面上の2次元的すべり発展をPINNで計算する予定である。 なお、HN(2019)では円形パッチの形を与え、その中で一定の摩擦パラメータを推定しているが、円形パッチを仮定せず、摩擦パラメータの空間分布の推定可能性も調べる予定である。
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Causes of Carryover |
電源まわりの備品を除いてGPUマシーンの経費を抑えて、ほぼ順調に使用してきた。次年度にはGPUマシーン用の電源周りの備品を備えて充実させるのに金額を使用する予定である。
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Research Products
(9 results)