2023 Fiscal Year Research-status Report
生体・環境・地質試料に汎用可能な包括的分子骨格組成解析による分子化石研究の新展開
Project/Area Number |
23K03558
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 英人 北海道大学, 理学研究院, 助教 (00785123)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝比奈 健太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (40728276)
安藤 卓人 秋田大学, 国際資源学研究科, 助教 (30852165)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 分子化石 / バイオマーカー / テルペノイド / 続成変化 / 化学分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は研究実施内容は (I) 有機化学反応プロセスの開発、(II) 現生種や植生情報が既知の試料における検証のための試料採取と予備分析、(III) リファレンス環境・地質試料の選定と予備分析に大別され、主な成果は次の通りである。
(I) モデル化合物を用いた反応プロセスの検証に着手した。トリテルペノイドのモデル化合物として、オレアナン型骨格に環内不飽和結合と複数の含酸素置換基(ヒドロキシ基、カルボキシ基)を有するオレアノール酸を選定し、ヒドリド還元、ハロゲン化、不均一触媒による飽和化/脱ハロゲン化など複数の反応ステップによるトリテルペノイド炭化水素の生成に部分的に成功した。ただし、想定外の骨格変換や一部反応段階における低収率など、現生種・環境試料への適用に先立ち解決すべき課題も浮き彫りになった。 (II) 文献調査、データベースの活用により、化合物組成が特有な分類群や、分子化石研究上の要請の高い分類群(基部被子植物、小葉類等)の天然物化学分野の文献調査を行い、炭素骨格レベルでの化学分類学的データを整理した。小葉類、モクレン類、針葉樹類の生体試料を採取し、一部試料について粗抽出物の代謝産物解析を行った。同定された代謝産物の組成は、想定された化学分類学的特性と概ね調和的であったが、未同定ピークを含む多様な誘導体が存在するため骨格組成の定量的比較には課題が残る。 (III) 有機物の起源や熟成度の異なるリファレンス試料とするため、地質試料・環境試料の採取と分子化石組成の記載を行った。北海道、岩手県、福井県において、中生代から新生代の植物化石(ソテツ類、被子植物、針葉樹類)、樹脂化石(琥珀・コーパル)、石炭(褐炭、瀝青炭)、完新世の土壌や植物遺体試料を採取して分析に供した。得られた化学分類学的成果の一部は国内外の学会で報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
有機化学反応プロセス開発に想定以上に時間を要している。モデル化合物の炭化水素化には一部成功したが、想定外の骨格変換や一部反応段階における低収率などの問題も浮き彫りとなった。生体・環境試料への適用はプロセスの改善を待って行う必要があるため、今年度中の着手には至らなかった。一方、生体試料や環境・地質試料の代謝産物組成や分子化石組成の解析は順調であり、植物化石由来の新規分子化石候補化合物の発見や、裸子植物樹脂中の分子化石組成の特徴と熱熟成に伴う構造変化の特徴の解明などの進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
炭素骨格プロファイリングの要となる、骨格構造の特徴を保持した炭化水素化反応プロセスの開発を重点的に進める。オレアノール酸以外のモデル化合物も併用して、骨格変換を抑制する反応条件や順序を検討し、反応プロセスを確立する。 生体・環境・地質試料の採集・解析も継続し、炭素骨格プロファイリングの検討に用いる基準試料を用意する。これには、選定された生物種や環境・地質試料から抽出された、前処理の有無や精製度の異なる抽出物や精製画分が含まれる。一部確保済みの藻類試料と湖沼・堆積物試料についても追加の確保・サンプリングと、代謝産物・分子化石組成の解析に着手する。 モデル化合物での反応プロセスが一定レベルに到達次第、炭素骨格プロファイリングの実試料への適用に着手する。代表種の炭素骨格プロファイルを従来方式による代謝産物解析結果と比較し、新手法の特徴や精度を評価する。
|
Causes of Carryover |
2023年度末に計画・実施した野外調査・試料採取に係る旅費や試料送料のうち一部が、4月帰着分や4月精算分となったため相当額が翌年度使用となった。
|
Research Products
(12 results)
-
[Journal Article] Large igneous province activity drives oceanic anoxic event 2 environmental change across eastern Asia2024
Author(s)
Takashima R., Selby D., Yamanaka T., Kuwahara Y., Nakamura H., Sawada K., Ikeda M. A., Ando T., Hayashi K., Nishida M., Usami T., Kameyama D.. Nishi H., Kuroyanagi A., Gyawali B. R.
-
Journal Title
Communications Earth & Environment
Volume: 5
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Climate, vegetation and oceanographic change in the eastern margin of Asia during Oceanic Anoxic Event 2 driven by pulsed Large Igneous Province activity2023
Author(s)
Reishi Takashima,David Selby,Toshiro Yamanaka,Yoshihiro Kuwahara,Hideto Nakamura,Ken Sawada,Masashi A. Ikeda,Takuto Ando,Keiichi Hayashi,Hiroshi Nishi,Azumi Kuroyanagi,Babu Ram Gyawali
Organizer
2nd Asian Palaeontological Congress (APC2)
Int'l Joint Research
-
-
-