2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K03587
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 淳 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40760335)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 機械学習 / 磁気特性 / ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
個々の原子のレベルで材料の磁気的特性を評価することを目的として,機械学習モデルの開発を行った.本年度は,機械学習モデル構築の第一段階として,(1) 鉄(Fe)単元系に対する学習データの収集,および (2) 機械学習の実行と方法論の検討を進めた. (1) 密度汎関数理論に基づく第一原理計算によって様々な結晶構造・原子配置でのFeの電子状態を解析し,原子構造と電子状態密度および磁気モーメントとの関係のデータを網羅的に取得した.特に,Feの主要な結晶構造である体心立方格子(BCC)および面心立方格子(FCC)構造に対して各種の変形モードのひずみを与えた構造や,原子空孔を持つ構造を主な対象とした.また,第一原理計算により得られる大量のデータを効率的に処理するための解析環境 (スクリプトなど) を整備した. (2) 人工ニューラルネットワーク (ANN) モデルを用い,機械学習を実施した.基本的なネットワークの構成は,研究代表者らが先行研究にて開発した電子状態解析のためのモデルと同様に設定した.また,データの取得および機械学習の実行と並行して,予測の精度・信頼性を向上させるため,ネットワークの構成の再検討した.加えて,機械学習モデルを効率的に設計するための検討を進めた.特に,ANNモデルにおいて人為的に設定する必要のある,いわゆるハイパーパラメータを最適化するための方法論を構築した.ANNモデルのネットワークの再構成およびハイパーパラメータ最適化法の実証については,次年度以降に実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね申請当初の研究計画に沿って進行しており,大きな問題は生じていない.第一原理計算による機械学習データ収集は,研究代表者が先行研究において開発した解析ツール (データ処理を自動実行するためのスクリプトなど) を援用することで効率化した.また,必要に応じて新たな解析ツールを開発した.現時点ではFeに対して必要な全てのデータの取得が完了したわけではないものの,主要なデータの大部分は既に取得しており,機械学習によるパラメータ最適化と実証試験に移行できる状態にある. また,人工ニューラルネットワークモデルのハイパーパラメータを系統的に決定する方法を検討した.それにより,対象とする材料や物性などに応じたモデルの最適化プロセスが効率化.そのため,多元系材料(次年度以降に解析予定)のような複雑な材料を対象とする場合であっても,学習に問題が生じた際の改善が容易となると考えられる. 当初の計画からの主な変更点としては,研究代表者の所属研究機関の移動などの諸事情に伴い,本年度に購入予定だった計算機の購入時期が次年度以降へ後ろ倒ししたという点が挙げられる.ただし,他の計算リソースを本研究の遂行のために代替的に利用したため,上述の計算実施計画(特に機械学習データ取得)に対して大きな影響は無かった. 以上を総合し,本研究は概ね順調に進行していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり,本年度の研究計画は概ね計画通りに進行しており,次年度以降も当初の計画どおりに各項目を実施することを予定している(研究計画に関して特筆すべき大幅な変更は無い).具体的な次年度の実施内容としては,Feに対する学習データ取得および機械学習・動作検証を完了する予定である.また,機械学習の対象とする材料種として,Fe単元系に加えて,Ni単元系,Fe-Ni二元系などへ順次拡大することを計画している. 機械学習モデルの実証段階においては,充分な学習精度が達成できないなどの問題が生じる可能性がある.その場合には学習データセットやニューラルネットワークモデルの構成を再考する必要があるが,本年度に検討・開発したハイパーパラメータ決定法などをベースとして,ニューラルネットワークモデルの再設計を行うなどの方法で対処する. また,次年度には,本年度から延期していた計算機の新規購入を予定している.
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Causes of Carryover |
本研究計画の始動後に研究代表者の所属機関の異動が決まったことにより,当該年度に予定していた大型計算機の購入を次年度に延期したため,使用額と支出予定額に差異が生じた. 次年度に,異動後の所属機関にて,当予算にて大型計算機を購入する予定である.
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