2023 Fiscal Year Research-status Report
PEEKの高速応答性の評価とそれを応用した水中転がり疲労下における表面き裂解析
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23K03641
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松枝 剛広 富山大学, 学術研究部工学系, 助教 (90748972)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | PEEK / 軸受 / き裂進展 / ラインクラック / ヤング率 / ポアソン比 / 摩耗 / トライボロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題より得られた経費により、令和5年度においてPEEK高速引張試験を計14本実施し、その実験で得られた縦ひずみおよび横ひずみを用いて異なるひずみ負荷速度下(負荷速度0.1,1,10,100[/min])におけるPEEKのヤング率およびポアソン比を計算した。その結果、このひずみ速度領域においてはヤング率およびポアソン比に有意な差はみられないが、引張強さはひずみ速度が増加とともに上昇した。この結果は論文にまとめられ、当初の計画を前倒しして2023年12月15-18日にタイ、バンコクで開催された国際会議、2023 12th International Conference on Advanced Materials and Engineering Materials (ICAMEM2023)にて「Effect of high strain rate on Young’s modulus and Poison’s ratio of PEEK under tensile load 」の題目で発表された。本研究はこの会議で高く評価され、Best Paper Awardを受賞した。また、この国際会議に提出した査読付き論文はSpringer Proceedings in Physicsに掲載され2024年度中に刊行される予定である。 また、転がり疲労試験における表面き裂の観察も現在、4本の試験片の疲労試験および顕微鏡観察を並行して進めており、き裂の進展量と軸受溝の摩耗量の関係について新たな知見が得られている。また、ラインクラックの発生位置および進展方向の整理については、当初の予定より遅れているが、試験および観察を継続し表面き裂観察の結果と合わせて国際会議で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、予定通り令和5年度中に「高速引張試験におけるヤング率・ポアソン比の取得」が完了し、接触問題に利用可能な弾性率の値を得ることができた。当初計画では高速引張用のジグを作製する計画であったが、取付およびひずみ測定方法を工夫することで高ひずみ速度下における引張試験を実現することができた。また、当初の計画では本結果は令和6年中に国際会議で発表する予定であったが、令和5年12月に国際会議ICAMEM2023にて発表する運びとなり、課題1は計画よりも順調に推移している。また、本課題に関連して「Some thermal problem in two small power generators: Flexible solar celland non-metallic bearing」の題目で招待講演を行った。課題2については、転がり疲労試験における表面き裂の観察については、当初計画通りの速度で推移しており、得られた知見についてもすでに国際会議に投稿可能な形で論文にまとめている。ラインクラックの発生位置・進展方向の整理についてはラインクラックを発生させる試験荷重の割出しと異なる繰返し数においてもき裂位置を特定させる手法の開発が完了し、順次試験およびデータの取得を行っているが、当初の計画よりもやや遅れている。申請者は令和6年4月付で申請時の研究機関から他の研究機関に転出したため、試験機および観察機器は富山大学に設置されている機器を継続使用できるよう、令和5年度中に調整を終えた。また、試験機・および観察機器を除く研究環境移転も報告書作成時にはすでに完了しており、本課題の継続実施に不安はない。
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Strategy for Future Research Activity |
課題2における表面き裂観察、ラインクラックの発生位置・進展方向整理、ラインクラックの内部顕微鏡観察は引き続き富山大学での設備を使い実施する。表面き裂およびラインクラックの観察手法は既に確立しており、当初の計画に沿って推進していく。また、これから実施する内部き裂の断面観察については、令和5年度まで申請者が所属していた研究室では良く利用された手法であり複数の論文において樹脂内のき裂観察結果が報告されている。したがって、内部き裂観察については実施にあたって不安はなく、当初の計画に従って推進していく。また、申請者は令和6年度に富山大学から鈴鹿高専に転出したため、課題実施に使用してきた試験機・観察機器は旧所属先である富山大学から許可を得て継続しようするとともに、鈴鹿高専においても水中スラスト疲労試験が行える環境を整えるために新たに購入する計画を立てており、試験機仕様の詳細を検討している。さらに、鈴鹿高専に設置されているSEM-EDS、FT-IR、レーザー顕微鏡および高精度光学顕微鏡についても使用許可申請および使用のための講習を受ける予定であり、令和6年度中に鈴鹿高専内で本課題の実施を完結できるよう環境構築を行う計画である。
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Causes of Carryover |
当初計画では令和5年度中に高速引張試験用の専用ジグを設計・発注する予定であったが、既存のジグを用いて取付および測定方法を工夫することで高ひずみ負荷下での引張試験を実現できたため、ジグの製作費用を使用する必要がなくなり、令和5年中に使用した物品費は当初の想定よりも小さくなった。また、申請者が令和6年度4月より富山大学から鈴鹿高専に転出することが決定したため、鈴鹿高専で課題遂行に必要な実験環境を構築することを見越し、水中転がり疲労試験機購入のための金額を確保するために、令和5年度中は支出を抑えた。この次年度使用額の大部分は令和6年度中に水中転がり疲労試験機購入に使用する予定である。
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