2023 Fiscal Year Research-status Report
A study on high-precision real-time tracking of mobile devices and its application to contactless identification by using machine learning
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23K03889
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
佐々木 愛一郎 近畿大学, 工学部, 准教授 (20823610)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 位置推定 / 磁界 / 機械学習 / 非接触認証 / リアルタイムトラッキング / アイソレーション / スイッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
磁界式位置推定システムでは、携帯端末が発生した交流磁界をターゲットエリア内の様々な位置に配置された複数のセンサで検出し、各センサの検出信号レベル情報を利用して端末位置を推定する。したがって端末位置を正確に推定するためには、各センサが磁界レベルを正しく検出し、さらに検出信号レベル情報を正確に収集する必要がある。 我々が構築した位置推定システムでは、全てのセンサから(並列に)送られてきた検出信号をスイッチ回路で順次切り替え、各センサからの信号を時分割で収集していた。しかし半導体リレーを用いたスイッチ回路のアイソレーション性能が不十分であったため、1つのセンサからの信号の経路に別のセンサからの信号が混入し、それによって位置推定精度が大幅に低下するという問題を抱えていた。 この問題を解決するためにまず我々は、実用上要求される精度で位置推定を行う上でスイッチ回路に求められるアイソレーション性能を試算し、60dB以上のアイソレーション比が必要であることを示した。そしてこの条件を満たすスイッチ回路を実現するため、メカニカルリレーを用いたスイッチ回路を試作した。試作した回路のアイソレーション比を測定したところ、80~90dB程度のアイソレーション比が実現されており、我々が試算した要求条件を十分に満たしていることがわかった。さらに試作したスイッチ回路を位置推定システムに導入し、100cm×100cmの平面エリア内に存在する端末の位置推定を行ったところ、従来は24.6cmだった平均推定誤差が5.7cmまで縮小した。5.7cmという平均推定誤差は、あらゆるアプリケーションに対して十分な位置推定精度であるとは言えないが、一部のアプリケーションに対しては要求条件を満たしていると考えられ、限定的ではあるものの、機械学習を利用した磁界式位置推定システムの精度が実用的なレベルに到達したことには意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メカニカルリレーを利用したスイッチ回路の導入によって、2次元平面内に存在する端末の位置推定においては精度が大幅に向上したものの、2次元平面外に存在する端末(例えば端末が床から離れた場所存在する場合)に対しては推定精度が十分に向上しないことがわかった。この事実は、位置推定精度を低下させる原因がスイッチ回路のアイソレーション性能だけではないことを示唆している。 2次元平面外に存在する端末に対する位置推定精度が低下する原因は複数考えられるが、現段階では原因の確定に至っていないため抜本的な対策を打つことができず、そのことが当初予定に比べ研究が遅れる要因となっている。推定精度低下の原因を確定するための実験プランを立案し、早期に原因を確定して対策を打つ必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元平面外に存在する端末に対する位置推定精度が低下する原因を究明し、対策を打つことが最重要である。 現在疑われる原因の1つは、端末から発生する不要電界である。位置推定の対象となる携帯端末は本来バッテリ駆動であるためアースされることはないが、現在我々が実験に使用している端末はAC電源駆動であるためアースされており、そのため本来存在しないはずの不要電界が端末から発生し、ノイズとしてセンサに混入している可能性がある。このことを確かめるために、バッテリ駆動端末を新たに製作して位置推定実験を行い、不要電界が推定精度低下の原因か否かを確定する。 推定精度低下を招く可能性のある別の要因は、機械学習用の訓練データを計算する際に、端末やセンサに搭載されたコイルの物理的なサイズや形状が加味されていなかったことである。これまでは計算コストを下げるために、コイルが無限小磁気ダイポールであると仮定した上で訓練データを計算していた。しかし現実のコイルは3次元的な大きさを有しているため、端末が創り出す磁界分布やセンサが検出する磁界レベルが、計算値から乖離している可能性は否定できない。そこで、コイルのサイズや形状を加味した上で磁界分布を新たに計算し、コイルを無限小磁気ダイポールであるとみなして得た従来の計算結果との比較を行い、訓練データを計算する際の近似的アプローチの有効性を検証する。 以上の方策によって位置推定精度が低下する原因の究明と対策を行った上で、当初予定の計画を再開する。
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Causes of Carryover |
2024年度にネットワークアナライザを購入予定であるが、2024年度分の交付予定額のみでは本器を購入できないため。
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