2023 Fiscal Year Research-status Report
深層学習による分光エリプソメトリー解析の完全自動化技術の開発
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23K03923
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
藤原 裕之 岐阜大学, 工学部, 教授 (40344444)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 分光エリプソメトリー / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
材料光物性の評価は太陽電池等の光電子デバイスの開発において非常に重要である。分光エリプソメトリーは材料光物性の高精度評価法であり、試料からの反射光の偏光状態の変化を測定し、データ解析により材料の光学定数 (屈折率n, 消衰係数k) や薄膜の膜厚を評価する。しかし、未知材料に対する解析は非常に難しいため、利用者に知識や経験が必要となり、広く利用されていない欠点がある。そこで近年、AI技術の1つである深層学習を用いたエリプソメトリー解析が注目されている。この新手法では、従来の解析を完全に自動化し、さらに高速化を実現できるが、これまでの報告例では教師データを光学吸収ピーク1本で生成していたため、複雑なスペクトル形状を表現できない問題があった。そこで本研究では、教師データのピーク本数を大幅に増加させた仮想スペクトルデータを学習させることにより、より多様なスペクトルを評価することを試みた。さらに、薄膜のバルク層に加え、薄膜の表面ラフネス層の予測についても検討を行った。 その結果、CdTe結晶などの複雑な形状を示す光学吸収スペクトルに対し、より正しいスペクトル概形を予測できるようになった。また、薄膜の膜厚に関しては、絶対誤差は4 nm程度であり、高い解析精度が得られた。さらに、予測時間は約3秒であり、従来の解析と比較し、大幅な高速化が実現した。以上から、本研究の解析法が未知材料の高速評価に対し、高い能力を発揮する可能性があることを明らかにした。一方で、予測スペクトルは微細なピーク形状を完全には表現できておらず、教師データおよび深層学習モデルに改良が必要であることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、当初予定した通りに順調に進んでいる。特に、分光エリプソメトリーの深層学習に多様なスペクトルデータを適用して解析を行う試みは、一定の成果をあげ、従来の研究に比べ、大幅な改善を実現した。分光エリプソメトリー解析では、表面ラフネスの存在がスペクトルの位相を大きく変えるため、表面ラフネスを正確に見積もることが極めて重要である。本研究では、表面ラフネス層を考慮して解析を行う新しい試みを検討したが、予想以上に高い精度で解析できることが明らかになった。 研究室には、これまで購入したPCクラスターシステムが存在し、これらを活用して様々な教師データを生成できたことも、研究が順調に進んだ理由となっている。現在は、GPUを使用した深層学習の学習に時間がかかっているが、研究の進捗を大幅に遅らせることはなく、研究を実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行ってきた研究より、深層学習を適用した分光エリプソメトリー解析では、教師データの質が非常に重要であることが分かってきている。特に様々な結晶構造のスペクトルを精度よく再現できる教師データを作成することが、より高度な解析に不可欠であり、これを適切にモデル化する必要がある。これまでに研究室で構築してきた様々な材料の光学データベースを活用することにより、より質の高い教師データを生成し、精度向上を目指す。
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