2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of a Hybrid Stochastic Finite Element Method with Enhanced Versatility for Uncertainty Quantification
Project/Area Number |
23K04012
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Research Institution | Oyama National College of Technology |
Principal Investigator |
中川 英則 小山工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (00369935)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 確率有限要素法 / 確率非線形問題 / 弾塑性問題 / モンテカルロ法 / NISP法 / 多要素多項式カオス展開 / 選点直交性 / 多次元確率変数問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,モンテカルロ法(MCM)では1回の計算に時間が掛かる問題に対して,MCMの代替手法を開発することである.具体的には確率弾塑性問題を指している.MCMは扱い易くロバストであり多次元確率場も簡単に扱える大変有用な方法である.しかし,過去に確率弾塑性問題を扱った経験では,MCM1回の計算に6分21秒を要し,これを1000回行うため計6210分を要した.一方,確率有限要素法(SSFEM)では139分を要した.またMCMでは,途中であるパラメータの確率モーメントを調べたくなった場合には,全データを事前に保存しておくか,もう一度全ての計算をやり直す必要があるが,SSFEMはその点気楽に行える.MCMが非常にロバストで扱い易いとは言え,SSFEMの時間短縮と1回の計算で済む気軽さは中々捨てがたい魅力である. 上述の目的に対して,当該年度は次を行った.非線形な確率有限要素法において,平均は正確に追えても分散を正確に追うことは中々難しい.その解決手法として,2016年度にNISP(Non-Intrusive Spectral Projection)法をコードに局所的に組み込んだNISP確率有限要素法(nispSSFEM)を提案した.しかし,有限変形確率弾塑性問題を扱う場合に,計算が不安定となる問題が生じていた.また,NISP法における確率変数の内積計算に時間が掛かる点も課題であった.1年目では,1次元確率場の範囲ではあるが,これらの問題点を解決した.具体的には,多要素多項式カオス展開(Me-PC展開)を用いて定義域を分割した小区間で条件付き直交多項式カオス基底を構築し,それをnispSSFEMに導入した.Me-PC展開の導入により小区間でバラツキが抑制できるため,内積計算には直交多項式の選点直交性が高精度で活用できる.そのため正確かつ高速な確率射影の計算が可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている理由は,単純に自らの校務と研究のバランスが上手くとれなかったことによるものであり,研究遂行上に予想していなかった学術的な問題点が発生した訳ではない.高専では,授業・学生指導(クラス担任,寮宿直,クラブ活動)・校務(各種委員会,主事補,室長など)・研究(外部資金の獲得)の全てに渡ってバランス良く業務をこなすことが求められる.科研費の申請時点で次年度の校内業務が決まっているが,次年度の業務全体のバランスを事前に予測することは中々難しい.また,多くの高専で使用している数学教科書を手掛ける老舗出版社の一つである大日本図書より,教科書,問題集,反復プリントの執筆業務を引き受けていたことも重なって,11月までは研究以外の業務に多くの時間を割いたことが原因である.しかし,研究以外のこれら多くの業務も高専では非常に大切な校務であり,全力で取り掛かる必要がある.そのために,単純に自らの業務バランス配分のミスが原因であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的を達成するため,次の3点の問題解決が必須であると考える. スペクトル確率有限要素法は,①モンテカルロ法のように既存の有限要素法プログラムをそのままでは利用できないこと(intrusive手法).②確率非線形性が絡む問題全般についての容易に取り込める解法が確立していないこと.③確率問題を扱う際には避けて通れない次元の呪い.1年目では,このうちの①および②の解決に向けた手法の開発を,1次元確率場の範囲ではあるが行った.この成果を2024年5月の応用力学シンポジウムにて発表する予定である.その上で,今後の推進方策は次となる.(1) 多次元確率変数が関わる非線形問題に対して上述の手法を拡張すること.(2) (1)と同時に,上記③の問題解決に向けた基礎研究を行うこと.この2点が2年目の課題である. 1年目で行ったことを例えると,「以前は確率変数の定義域全体に渡って共通の多項式カオス基底を構築した上で,リッツ法のように確率変数の近似を行っていた.しかしそれでは近似精度が落ちる.そのため,定義域を有限要素(多要素)に分割し,その小さくなった要素内で確率変数のバラツキがより抑制できるようになったところに選点直交性を利用した.これは有限要素法におけるガウス点の利用と同様である.」とまとめられる. そして上記を,2016年度から開発してきたNISP確率有限要素法(nispSSFEM)に組み込むことで,上記の問題①および②の解決を図った.しかし有限要素法と大きく異なる点は,固体力学問題を扱う場合には3次元有限要素法が扱う次元としては最高位となるが,多次元確率変数は3次元に留まらないということである.そのため,多次元確率場に対する推進方策としては,選点直交性に用いる多項式カオスの零点について,重点サンプリングやマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)の使用などを検討する予定である.
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