2023 Fiscal Year Research-status Report
支承の経年劣化を考慮した免震橋の地震時安全性評価と維持管理・損傷制御戦略の提案
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23K04018
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
松崎 裕 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (10506504)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 免震橋 / 地震動 / 経年劣化 / マルチハザード / 損傷部材 / 復旧性 / 道路ネットワーク / 接続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉛プラグ入り積層ゴム支承を免震支承として使用し、連続桁をRC橋脚で支持した免震橋を対象として、天然ゴムの経年劣化に伴う支承としてのせん断剛性の増加、破断ひずみの低減等の力学的特性の変化を考慮して、生じ得る損傷とその損傷制御の在り方、道路ネットワークとしての接続性について検討を行った。特に、損傷制御に関する背景としては、研究代表者のこれまでの検討において、地震動強度を漸増させた漸増動的解析により、構造系としての損傷が、固有周期に依存したRC橋脚としての非線形地震応答の特性から、橋脚高が高い場合には免震支承の破断により決定されやすく、橋脚高が低い場合にはRC橋脚の地震応答の終局変位への到達により決定されやすいことが明らかとなっている。橋梁用免震支承が受注生産品であることを踏まえると、免震支承を破断させないことが復旧性を高める観点で重要である一方で、特に河川内に位置する等のアクセス制約のあるRC橋脚が超過作用等で終局限界状態に到達してしまうと、速やかな復旧が困難となり、社会に及ぼす影響が大きくなる。 そこで、令和5年度は、特にそうした制約条件がある場合について、レベル2地震動に対しては確実に免震支承で地震エネルギーの吸収を図り、超過作用に対してはアンカーボルトを破断させることで、長期の復旧期間を要する免震支承本体の破断やRC橋脚の終局的損傷を回避する場合について、地震動、経年劣化、洪水のマルチハザード下での道路ネットワークの接続性への影響も含めた検討を行った。そして、アンカーボルトを超過作用下で破断させることで、長期の復旧期間を要する損傷モードを回避し、震災後において道路ネットワークとして速やかな交通機能の回復が可能となることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従って、設計想定における地震動作用を超過する場合におけるアンカーボルトでの損傷制御を含めて、早期の交通機能回復を図るための検討を行えており、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、早期に復旧して交通機能を回復できる免震橋を実現する損傷制御戦略・免震支承の更新戦略を提示することを最終的な目標としている。令和6年能登半島地震の被害および復旧・復興においても、道路橋単体としての安全性・復旧性の向上だけでなく、路線や道路ネットワークとして交通機能を早期回復させることの重要性が改めて浮き彫りになっている。そこで、地震動の作用と免震支承の経年劣化をマルチハザードとして考慮した上で、道路ネットワークとしての交通機能の早期回復、そして個別橋梁の地震時安全性・復旧性の向上をより意識して研究を展開していく予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は、アンカーボルトの破断による地震時損傷制御の検討およびその社会的な影響評価としての道路ネットワークの接続性評価に関する解析的検討に重点的に取り組み、その検討結果を踏まえた物品の購入については見合わせていたため、次年度使用額が生じた。解析的検討の結果および令和6年能登半島地震の復旧・復興過程における課題を踏まえると、免震支承の経年劣化によるせん断剛性の変化に着眼した検討とともに、道路ネットワークの接続性・レジリエンス評価に関する検討がより重要になってきている他、そうした検討により、社会への影響を踏まえて個々の構造物における復旧性向上戦略をより明らかにできると判断しており、そのような検討および成果発表に残額を使用する予定である。
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