2023 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム量増加の効果を最大化させる倍数性育種の基盤構築
Project/Area Number |
23K05203
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (50301875)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハスカップ / 倍数性 / 果実成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハスカップの二倍体(2n=18)、四倍体(2n=4x=36)、五倍体(2n=5x=45)、六倍体(2n=6x=54)、異数体(2n=51)系統を育成し、果実成分についてGC-MSを用いて解析を進めた。北海道大学北方生物圏フィールド科学センター生物生産研究農場の園芸圃場でハスカップの各系統を栽培し、果実成熟期に果実を採取し、-80℃で冷凍保存した。果実成分の解析の前処理として、凍結乾燥機で果実を乾燥させ、ミルサーで粉砕した。常法によりガスクロマトグラフィー用のサンプルを調整し、GC-MSを用いて果実の糖類(糖および糖アルコール)と有機酸の分析を行った。マンノース、フルクトース、グルコース、ガラクトース、シュークロース、ソルビトール、リンゴ酸、クエン酸、キナ酸の定量を行い、倍数性とこれらの果実成分量の関係性について解析を行った。果実中のキナ酸およびソルビトールの含量については、倍数性と正の相関があることがわかった。その他の成分については、倍数性との関係性は不明瞭であった。四倍体の果実成分は相対的に高い傾向にあった。果実1個当たりに換算した果実成分についても解析を進めている。三倍体ハスカップ個体も開花に至ったが、放任受粉では結実しなかった。総合的に四倍体果実は成分含量が高くなる傾向にあったが、ガラクトースの比較では六倍体果実が高含量を示すなど、倍数性と成分含量に関する特徴的なデータを蓄積することができた。ハスカップの育種において、目的形質に合わせた倍数性の選択の可能性が示唆された。果実形質以外に、植物の生育に関係の深い気孔のサイズについて、深層学習による気孔認識のプログラムの開発についても基礎的知見の蓄積を行った。今後の倍数体評価への応用を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を以下の論文にまとめ、公表することができた。 Li, J., and Hoshino, Y. (2024). Elucidating the impact of ploidy level on biochemical content accumulation in haskap (Lonicera caerulea L. subsp. edulis (Turcz. ex Herder) Hulten) fruits: A comprehensive approach for fruit assessment. Scientia Horticulturae, 327, 112831.
Meng, X., Nakano, A., and Hoshino, Y. (2023). Automated estimation of stomatal number and aperture in haskap (Lonicera caerulea L.). Planta, 258(4), 77.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで育成したハスカップの二倍体(2n=18)、四倍体(2n=4x=36)、五倍体(2n=5x=45)、六倍体(2n=6x=54)、異数体(2n=51)の栽培を続け、果実形質の年次間差異についてデータを取得予定である。果実成分のほか、果実サイズ等の表現型についても解析を行う。また、遺伝的背景が近い倍数体系統を試み、ゲノム量増加の効果を発揮しやすい遺伝子型の探索を進めたい。コルヒチン処理による倍数体作出方法について、ハスカップに特化したプロコールの開発を進め、二倍体実生から二倍体個体を維持しつつ、四倍体および八倍体を切り離して獲得すること手法を確立したい。ハスカップの二倍体は北海道東部の限定した場所にしか自生していないため、採取許可を得た後に、植物材料の入手のための野生株から果実のサンプリングを行うことを計画している。多様な遺伝資源を導入し、実験材料として供試する。 倍数体評価の方法として、画像解析のよる気孔の同定・認識のモデルの開発についても研究を進め、倍数体と気孔の関係性についても解析を深める予定である。
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