2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K05333
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 淳司 京都大学, 農学研究科, 教授 (40183842)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | セグメンテーション / グラフ理論 / 形成層活動 / ラジアルファイル |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木細胞の発生を司る形成層細胞の分裂は, 並層分裂および垂層分裂に分類される. 前者が2次木部および師部細胞を形成するのに対し, 後者は円周方向に沿って形成層細胞数を増加させ, 形成層そのものや樹幹部の円周拡大を可能としている. 針葉樹の垂層分裂について、板目連続切片を用いたBannanの一連の報告により, その詳細な分裂様式が明らかとなっている. 本年は, 木口断面画像に対して、最新の画像解析手法をもちいることで, 針葉樹における形成層細胞の垂層分裂履歴をより、効率的かつ定量的に追跡することを目的とした. 対象には針葉樹材のスギ (Cryptomeria japonica) を選定し, 個々の放射列や放射柔細胞を追跡することで, 材全周に渡る垂層分裂の凡その発生位置や頻度の定量評価を実施した. 蛍光顕微鏡画像約700枚を結合し,切片全領域を含む1枚の画像 (26,976×25,632 pixels) とした. 当該画像に対し細胞毎セグメンテーションを適用することで,仮道管, 軸方向柔細胞, 放射柔細胞の細胞境界予測を行った. モデルアーキテクチャには, U-Netを使用し, 予測結果の一部は手動修正を施した. 髄を除く2年輪分 を対象に, 近似最近傍探索と細胞形状類似度指標を利用した放射細胞列抽出アルゴリズムを放射状配列の細胞画像に応用することで, 枝材木部全周に渡って放射列の抽出を実施した. 上記結果をもとに, 垂層分裂のタイミングと頻度の定量を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大断面の木口切片を用いて、画像から放射列を抽出することに成功し、解析結果の一部を木材学会大会(京都)において、発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) セグメンテーションとグラフ理論を応用した、ラジアルファイル内の全細胞抽出法のハード・ソフトウエアのブラッシュアップとGitHubへの公開を目指す。 2) 個々の細胞の形態情報に関する時系列変化を詳細に解析する。細胞列の増加率の放射方向変化や、仮道管放射列や木繊維放射列の消失と放射組織との関連などをしらべて、形成層活動の年変動について新たな視点から考察する。 3)同様の実験を、他の針葉樹、ヤナギ、ポプラなどの比較的細胞配列が乱れない広葉樹の解析に応用する。
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Causes of Carryover |
関連学会が京都において開催され、旅費の支出が抑えられたこと、また、予定されていた北海道での国際会議が一年延期となり(今年度9月開催)、発表やその準備に等に関する経費が発生しなかったため。
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