2023 Fiscal Year Research-status Report
単体硫黄を活性化剤として用いるハロゲン化反応の開発と新規ラジカル反応への展開
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23K06041
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
前川 智弘 近畿大学, 薬学部, 教授 (40363890)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ハロゲン化 / 硫黄化合物 / 活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
温和な臭素化剤として広く用いられるNBS(N-Bromosuccinimide)は、一般にLewis酸による活性化が知られていたが、我々は硫黄化合物であるPhSSiMe3(PhSTMS)やPhSSPhを添加することによってNBSの反応性が大幅に向上することを見出した。さらに代替化合物の検討を行ったところ、非常に安価(500 g:2,500円(TCI))で、取り扱いが容易な単体硫黄(S8)が同等の活性化効果を示すことを見出した。S8 は有機反応に利用されているが、硫黄原子の導入に使われている例が多く、NBSの活性化に用いた例はこれが初めてである。 本年度は、S8による活性化法の基質一般性について検討を行った。その結果、種々の電子豊富な芳香環ではジブロモ化が収率よく進行した。また、電子求引性基を有する電子不足なアニソール誘導体の検討を行ったところ、NBSのみでは反応が進行しない基質に対しても、良好な収率でブロモ化反応が進行した。 さらにS8を添加剤として用いた場合、これまで見出していたPhSTMSやPhSSPhよりもNBSを活性化させることが分かり、より短時間で反応が進行することを見出した。さらにブロモ化だけではなく、クロロ化やヨウ素化においても活性化効果が見られ、S8を添加しない場合に比べて、反応時間の短縮や収率の向上が見られた。 特にヨウ素化では、ヨウ素化剤の種類を変えることで反応性が変わることを見出し、NISでは反応性に変化が見られなかったが、DIHを用いることで収率よく反応が進行することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた基質一般性について、S8の添加効果を明らかにすることができたとともに、ハロゲン化剤の種類を変え、種々のハロゲン化反応が活性化されることを明らかにすることができた。 さらにハロゲン化剤の構造についても検討を行い、ハロゲン化剤の構造によって、反応性が変化することも明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらなる基質一般性の拡張と反応収率の向上を目指し検討を行う。また、本活性化法に適用可能な硫黄化合物の構造を明らかにする。さらに新規ラジカル反応への展開を目指し、網羅的な検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度はS8を用いた基質一般性とその拡張に重きを置いて重点的に検討を進めたが、研究室既存の試薬で実行可能であったことと、その他、HPLCを新規購入し、その使用に伴う消耗品を購入予定だったが、今年度HPLCを購入しなかったため、当初予定よりも使用額が少なくなった。未使用分は来年度以降、新たな試薬やHPLC関連の消耗品の購入、関連学会での情報収集に研究費を充てる。
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