2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞内鉄還元メカニズムの解析から鉄取込み機序の全貌解明に挑戦する
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23K06377
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
簗取 いずみ 京都大学, 医学研究科, 講師 (40454847)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 鉄代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
2012年、過剰鉄により惹起される活性酸素(ROS)が膜の不飽和脂肪酸を過酸化することで誘発される細胞死(フェロトーシス)が発見された。しかし、フェロトーシス研究は過酸化脂質還元酵素であるGPX4などの抑制機構の解析が中心であり抑制系の解明は飛躍的に進んだが、鉄制御機構の破綻に伴う鉄毒性惹起機構に関しては未解明である。多くの疾患とフェロトーシスとの関連性が明らかになってきた現在、フェロトーシスの機序を解き明かすうえにおいても鉄代謝制御機構の詳細に注目した解析が必須である。 そこで、所属研究室にて構築した鉄取込み亢進細胞を使用し、CRISPR-Cas9スクリーニングを行ったところ、新たに鉄取り込みに関与する分子を見出すことに成功した。 本年度は、この新たに見出した鉄取り込み亢進分子のKO細胞を作製し、鉄代謝制御因子の解析、鉄取り込み過程のどのプロセスに関与するか等について解析を推進した。細胞内への鉄取込みは3ステップにより行われる:① Fe3+→Fe2+への還元反応、② Fe2+が鉄輸送体DMT1により細胞質へ輸送、③ 鉄シャペロンPCBPがDMT1からFe2+を直接受け取り細胞質にて分配する。当該分子は鉄の還元反応に関与していることを明らかにした。本分子をKOすると、主たる鉄取込み機序であるトランスフェリンートランスフェリン受容体を介した鉄取り込みが顕著に抑制されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、新たに見出した鉄取込み亢進分子のKO細胞の作製、相同分子入れ戻し実験における細胞内鉄濃度の測定や他の鉄代謝制御因子の変動について解析を推進することができた。また当該分子が細胞内での鉄の還元に寄与する可能性を見出すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の結果をもとに、鉄還元酵素への電子供与システムと鉄取り込み機序について解析を推進する。2つの方法により解析を推進する。1つ目に大腸菌・昆虫細胞系蛋白質発現解析システムを用い、鉄取込み亢進分子のタンパク質の大量精製、構造解析による機能検証を行う。2つ目に、鉄還元酵素への電子供与体として機能するAscやNADPH代謝と鉄代謝の統合的解析を推進する。Ascの代謝機構はほとんど未解明のままである。そこでAscの取込みに関わる輸送体の発現制御因子の探索をマイクロアレイ法やChip-seq法により解析し、発現制御機構を明らかにする。またAscプローブを用いて細胞内オルガネラ間のAsc動態を経時的に解析する。さらに、鉄取り込み時におけるAscオルガネラ間でのAsc量と鉄取込みの相関関係を解析する。 さらに、当該分子が肺がんの発症に関与するという報告があることから、肺がん細胞を用いて機能解析を推進するとともに鉄代謝と肺がん発症の関連性について解析を進める。
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Causes of Carryover |
初年度は、培養細胞を用いた解析を主に推進し、動物を用いた実験は次年度以降に行うこととした。そのため、動物購入費として予定していた120千円について、次年度に使用するよう変更した。
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