2023 Fiscal Year Research-status Report
Role of thymidylate synthetase in B cells of systemic lupus erythematosus
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23K07893
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉藤 元 京都大学, 医学研究科, 講師 (20422975)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / B細胞 / チミジル酸シンターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、全身性エリテマトーデス(SLE)患者のB細胞におけるチミジル酸シンターゼ(TYMS)の高発現とその機能的役割に注目している。SLEは自己抗体の生成を特徴とする自己免疫疾患であり、腎症の合併症を伴う場合には、治療が困難であり再発のリスクも高い。初治療での自己反応性B細胞の効果的な制御が、疾患管理における重要な課題である。本研究の主目的は、TYMSがSLE患者のB細胞分化を促進し、病態形成にどのように寄与しているかを明らかにすることである。具体的には、SLE患者の末梢血から採取したB細胞サブセットにおいて、TYMS遺伝子の発現が健常者と比較して有意に高いことが確認された。研究過程では、レンチウイルスベクターを用いた遺伝子工学技術により、TYMS遺伝子のノックダウンおよび過剰発現が可能な細胞系の構築に成功した。B細胞系の一つであるRamos細胞へのTYMS遺伝子の導入も成功したことは、B細胞の分化及び増殖におけるTYMSの具体的影響を評価する基盤を提供する。これらの進捗により、SLE患者のB細胞分化におけるTYMSの役割への理解が深まり、SLE及び健常者由来のB細胞におけるTYMSの発現パターンの比較分析を通じて、自己免疫疾患の病態メカニズムの解明に貢献することが可能となった。レンチウイルスベクターを活用した遺伝子工学技術を駆使して構築された解析システムは、今後の研究における重要なツールとなる。以上の成果は、SLEの病態理解のための進展であり、将来的に新たな治療法の開発につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、全身性エリテマトーデス(SLE)患者のB細胞におけるチミジル酸シンターゼ(TYMS)の高発現とその機能的役割を明らかにすることを目的としている。研究の焦点は、SLEにおけるB細胞の分化促進、病態形成への関与、およびTYMSが治療標的としての潜在性を探ることにある。2023年度の研究進捗では、SLE患者のB細胞においてTYMSの高発現が確認された。具体的には、SLE患者の末梢血から採取したB細胞サブセットで、TYMS遺伝子の発現量が健常者と比較して有意に高いことが確かめられた。また、健常者由来のB細胞を用いた分化誘導実験からは、TYMS発現が活性化B細胞において特異的に亢進する可能性が示された。この結果から、TYMS発現がSLE特有の自己反応性B細胞だけではなく、より広範なB細胞活性化プロセスにも関連している可能性が示唆された。本研究では、レンチウイルスベクターを活用した遺伝子工学技術を用いて、TYMS遺伝子のノックダウンおよび過剰発現が可能な培養細胞系を構築した。さらに、B細胞系の培養細胞であるRamos細胞へのTYMS遺伝子の導入が成功した。この進展により、B細胞の分化および増殖能に対するTYMSの具体的な影響を評価し、SLE患者のB細胞分化におけるTYMSの関与についての理解を深めることが可能になった。まとめると、SLE患者及び健常者由来のB細胞におけるTYMSの発現パターンを比較することで、自己免疫疾患の病態メカニズムに関する理解をさらに進めることができた。レンチウイルスベクターを活用した遺伝子工学技術を用いて、今後の解析につなげるシステムを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、全身性エリテマトーデス(SLE)患者のB細胞におけるチミジル酸シンターゼ(TYMS)の機能的役割を解明することを目的としており、その達成に向けた今後の推進方策を以下に述べる。初年度の研究進捗に基づき、今後は遺伝子改変培養細胞を用いたTYMSの機能解析を深化させる。具体的には、レンチウイルスベクターを活用して、培養B細胞(セルライン、患者細胞、健常者細胞)に対するTYMS遺伝子のノックダウン(KD)および過剰発現(Tg)を行う計画である。これにより、TYMSが自己反応性B細胞の分化および増殖を促進するかどうかの検証を進める。作製されたTYMS-KD細胞とTYMS-Tg細胞にCPGとIFN-αを添加し培養することで、各B細胞サブセットの分化能を解析する。このプロセスにより、TYMSがB細胞の分化に及ぼす影響を詳細に調べることができる。さらに、TYMS-KD細胞とTYMS-Tg細胞にIgM/IgG架橋刺激を加えた後の培養を行い、細胞の増殖と生存をCFSE染色とPI/Annexin V染色で確認する。これらの実験により、TYMSがB細胞の活性化および生存にどのように関与しているかを明らかにする。この段階的なアプローチにより、TYMSがSLE患者のB細胞分化を促進して病態形成に関連するかどうか、さらにTYMSがSLEの治療標的になり得るかどうかを科学的根拠に基づいて検証する。また、この研究プロセスを通じて、SLEの病態理解を深め、新たな治療法の開発に寄与することを目指す。
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Causes of Carryover |
2023年度における本研究では、当初予算よりも施行額が少なく、次年度使用金額が生じた。これは患者由来細胞の解析とレンチウイルスベクターの実験の費用が予想よりも低く抑えられたためである。次年度にはウイルスおよび培養細胞の拡大に追加資金が必要となるため、この次年度使用金をそれらの実験に充てる予定である。これにより、研究の質の向上と目標達成に向けた実験体制の強化が期待される。翌年度に本来請求していた助成金も含め、研究の進展に合わせて効果的に使用する。研究の各フェーズでの実験の拡充、データの収集・解析、成果の発表の資金として用い、研究成果の最大化を図る。
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Research Products
(1 results)