2023 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌を標的とした脳マラリア予防・治療法の開発に向けた研究
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23K07945
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
谷口 委代 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20620800)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マラリア / Plasmodium berghei ANKA / ネズミマラリア原虫 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、腸内細菌が関与する新たな宿主‐マラリア原虫相互作用の存在が明らかにされた。しかしながら、腸内細菌がどのように脳マラリアを含むマラリア病態に影響を与えているのか、その詳細なメカニズムは未解明のままである。本研究では、腸内細菌を標的とした脳マラリア予防・治療法の開発に向けた脳マラリアの病態形成機序を明らかにすることを目的とする。2023年度は、腸内細菌がネズミマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA(PbA)感染動態に与える影響について、無菌マウスを用いて確認した。PbAは、C57BL/6(B6)マウスに感染させることで実験的脳マラリアモデルとなり、熱帯熱マラリア患者同様の小腸病変を生じることから、このモデルを用いて感染動態の確認を行った。無菌マウスのPbA感染動態は、SPF環境下でのB6マウスの感染動態と変わらないと報告されており、腸内細菌の有無でマラリアの病態は変化しないと考えられている。B6[GF](無菌)マウスへのPbA感染動態を確認し、報告されているように、B6[SPF]マウスと変わらないことを確認した。16S rRNA遺伝子を用いた次世代シーケンサーによる菌叢解析により、PbA感染に伴う腸内細菌叢変化の網羅的な把握と、病態に関連する菌の特定は完了している。特定した腸内細菌株の一つを無菌マウスに投与して定着させたノトバイオートマウスにPbAを感染させると、マラリア感染病態が増悪する結果が得られた。この現象が、脳マラリアによる致死なのかを確認するため、感染7日目にEvans Blue染色液による脳症状(血液脳関門の透過性)を評価した結果、特定した菌株を投与したノトバイオートマウスでは血液脳関門の透過性が亢進しており、脳症状により死亡していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験施設を移動後、凍結保存PbA原虫の確認を行ったところ、脳症状による致死率の低下が認められたことから、長崎大学熱帯医学研究所生物資源室(熱研バイオリソースセンター)からPbA原虫の提供を受けて、再度、凍結保存PbA原虫の作製・感染動態の確認から開始した。このことから、計画実施に必須となるPbA原虫の確認作業からの開始となり、時間を要したが、上記、計画を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
特定した腸内細菌株の一つを定着させたノトバイオートマウスにPbAを感染させると、なぜ脳症状発症と脳症状による致死が早まるのか、今後、マラリア感染病態を変える因子の探索を実施して、その解明に取組む予定である。
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Causes of Carryover |
長崎大学熱帯医学研究所生物資源室(熱研バイオリソースセンター)からPbA原虫の提供を受けて、再度、凍結保存PbA原虫の作製・感染動態の確認から開始したため、無菌マウスへの糞便移植実験を実施できず、次年度使用額が生じた。
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