2023 Fiscal Year Research-status Report
脂肪由来幹細胞ADSCから誘導した肝細胞様細胞HLCの免疫原性獲得に関する研究
Project/Area Number |
23K08028
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
齋藤 裕 徳島大学, 病院, 講師 (50548675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 光生 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10216070)
池本 哲也 徳島大学, 病院, 教授 (20398019)
安友 康二 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (30333511)
山田 眞一郎 徳島大学, 病院, 特任助教 (30579884)
森根 裕二 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (60398021)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 脂肪由来間葉系幹細胞 / 肝細胞様細胞 / 免疫原生 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的;多能性幹細胞から分化誘導可能である肝細胞様細胞(HLC)移植は、ドナー不足に悩む肝細胞移植の代替治療として期待される。アンモニア代謝酵素欠損が原因となる尿素サイクル異常症患者に対しても、このHLC移植が根治療法ともなり得るが、患者由来HLCは健常者由来HLCと比較してアンモニア代謝能が不良であることが報告されている。すなはち、他家由来HLCの移植が必要となるが、臨床応用を考慮した際に、その免疫抗原性評価が重要となる。本研究では、脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)からHLCまでの分化誘導過程において、「いつ、個人の細胞としての性格を獲得し表出するのか」を評価したうえで、尿素サイクル異常症モデルへ移植しその効果を検討することを目的とする。 研究実施計画;1. ADSCからHLCまでの過程における免疫抗原性の評価 2. HLCの尿素サイクル異常症モデルへの移植 研究成果;R5年度は、研究計画 1の免疫原生評価のため、ADSCからHLC作成までの3段階において、HLA Class I・II、CD40、CD86、PD-L1、CD80発現をFACSにて評価した。基本的にADSCならば、本邦ですでに治験が行われているADR001試験(肝硬変患者への他家ADSC移植による肝線維化抑制効果の検証)の様に、基本的には免疫抑制フリーでの他家移植が可能である。結果として、ADSCの時点では、主要自己抗原となるHLA Class I発現を認めたがClassIIは発現を認めなかった。また、副経路のうち、T cell刺激に働くCD86及び抑制系に働く、PD-L1がごくわずかに発現していた。さらに、分化誘導過程が進むにも関わらず、細胞表面マーカーの発現傾向やその発現量は変化を認めなかった。よって、ADSC由来HLCの免疫原性は比較的低く、他家移植も選択枝となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R5年度は、免疫原性評価を実施した。我々が対象とする、代謝性肝疾患患者(尿素サイクル異常症・家族性アミロイドニューロパチー)由来のADSCから作成したHLCは、健常者のHLCと比較して肝細胞機能は不良であることが報告されている(Mol Ther Nucleic Acids. 2016)。その場合、健常者である他者由来の(allogenic) ADSCからHLCを誘導する場合、どの時点でHLCの免疫抗原性が上昇してくるのかを明らかにする必要がある。ADSC自体は製品化され種々の臨床治験に用いられており、他者由来の(allogenic) ADSCであっても、移植免疫における拒絶を受けないことが明白となっている。HLCはADSCを原料としており、分化培養過程において、「いつ、個人の細胞としての性格を獲得し表出するのか(免疫学的回避機構の性質を消失するのはいつか)」を追求することは再生医療の細胞移植において学術的に大きな意義を持つ。 ADSCからHLC作成までの4段階において、免疫原生の評価として、抗原提示主要シグナルであるHLA Class I・II、副経路として、T cell刺激に働くCD40・CD86、T cell抑制系に働くPD-L1・CD80発現をFACSにて評価した。ADSCの時点では、主要自己抗原となるHLA Class I発現を認めたがClassIIは発現を認めなかった。また、副経路のうち、T cell刺激に働くCD86及び抑制系に働く、PD-L1がごくわずかに発現していた。さらに、分化誘導過程が進むにも関わらず、細胞表面マーカーの発現傾向やその発現量は変化を認めなかった。よって、HLCの免疫原性は比較的低く、免疫抑制剤フリーでの他家移植が可能となるのではと考えている。R5年度に予定していた、in vitroでの実験系は終了しており、進捗としてはおおむね順調と判断している。R6年度はin vivoでの移植実験を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitroでの免疫原性評価が終了しており、代謝性肝疾患モデルへの移植を実施予定である。 尿素サイクル異常症UCD患者は、難病指定された稀少疾患の1つであり、CPS1/OTC/Citrinなど、尿素サイクルに必要な酵素が先天的に欠損することで高アンモニア血症の病態を呈し、その本邦での患者頻度は、OTC欠損患者 8万人に1人(現在約500人)、ASS欠損患者 7万人に1人(現在約100名)、Citrin欠損患者53万人に1人(現在100名以下)、CPS1欠損患者80万人に1人(現在約100名)となっている。その治療は食事制限・薬物療法が中心となるが、重篤な場合、肝移植を必要とする。本邦でのドナー不足を考慮し、また、一酵欠損のみのため、臓器移植までせずとも、HLC移植が根治療法につながると考えている。昨年成育医療センターからのプレスリリースにおいては、5人のUCD患児にES細胞由来のHLCを経門脈的に移植し、肝移植までのBridging治療となったとの報告もなされた。我々の教室では、OTC欠損マウスあるいはCitrin欠損マウスを保有しており、同マウスADSCから作成したHLC機能はWild typeマウス由来のHLCと比較して機能不良であり、やはり他家移植が必要と考えている。免疫原生評価の結果から推測するに、我々のHLCは比較的免疫原性が低く、免疫抑制剤フリーでの他家移植も期待される。疾患モデルマウスへの移植の前段階として、免疫抑制剤フリーの状態でHLCをWild typeマウスへ異種移植し、拒絶の有無も確認予定である(免疫原性のin vivoでの評価)。そのうえで、今年度は、同疾患モデルマウスへHLC移植を実施し、アンモニア代謝がどの程度改善するのかを実証する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 計画書作成時に購入予定であった消耗品の価格変動のため (使用計画) 翌年度分の研究費とあわせて消耗品に使用予定である
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Research Products
(10 results)