2023 Fiscal Year Research-status Report
HPVワクチンの「副反応」に関する仮説の科学的な検証
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23K08901
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
城 玲央奈 近畿大学, 医学部, 助教 (30973234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 郁生 近畿大学, 医学部, 教授 (00261529)
松村 謙臣 近畿大学, 医学部, 教授 (20452336)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | HPVワクチン / アジュバント / 分子相同性 / マクロファージ性筋膜炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)HPVワクチンに含まれるアルミニウム(Al)アジュバントが免疫反応を活性化し中枢神経障害が誘導されるかを検討するために、HPVワクチンとHPVワクチンと同じアジュバントを含むワクチンをマウスに筋肉内注射により接種させた。サーバリックス(HPV2価ワクチン、水酸化AlとMPL[モノホスホリピッドA]を含む)、ガーダシル(HPV4価ワクチン、硫酸Alハイドロキシホスフェートを含む)と、ビームゲン(水酸化Alを含む)ヘプタバックス(硫酸Alハイドロキシホスフェートを含む)、シングリックス(MPLを含む)、PBSを4週間毎に計3回、C57B/6雌マウスに筋肉内接種した。Alアジュバントを含むサーバリックス、ガーダシル、ビームゲン、ヘプタバックス投与群では、接種部位の筋肉に炎症細胞の浸潤を認め、F4/80陽性のマクロファージが存在した。一方、Alアジュバントを含まないシングリックスとPBS投与群には変化が生じなかった。いずれの群でも中枢神経に脱髄や炎症はなかった。シングリックス投与群でのみワクチン接種後に体重減少が観察されたが、神経症状を含む他の症状は認められなかった。以上から、接種部位の局所の炎症はHPVワクチン特異的ではなく、Alアジュバントを含むワクチンの筋肉内接種による生理的な局所変化であることが示唆された。また、局所の炎症があったとしても中枢神経の障害とは関連しないことが分かった。 2)HPV L1タンパクとヒトのタンパクの分子相同性についてデータベースを用いたコンピューター解析を行ったところ、HPV L1のエピトープはヒトのタンパク中には同定されなかった。また、HPV L1のエピトープ中のアミノ酸5個の配列はヒトのタンパク中に同定されたが、コンピューター上で作成されたランダム配列やB型肝炎ウイルスのエピトープ中にも存在していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)マウスへのHPVワクチンの投与実験によって接種部位局所の変化、中枢神経の変化を評価した。 2)HPV L1タンパクとヒトのタンパクの分子相同性説に関して、コンピューター解析による検討を行った。 1、2の結果について学会発表を行い、現在論文発表の準備中である。当初の想定と概ね合致した進捗状況であり、研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はマウスのHPVワクチン投与実験で得られた血清サンプルを用いて炎症性サイトカインを測定する実験方法を確立する予定である。また、「自己免疫素因のある個人」を模倣したモデルシステムである 2D2 マウスにHPVワクチンを接種させることで、自己免疫素因がHPVワクチンの副反応と関連するかを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、HPVワクチン接種後のマウスの血清中の炎症性サイトカインを評価するためにELISAを行う予定であり、各種サイトカインのELISAを行うための試薬を複数購入する予算を計上していた。しかし既報では血清中のサイトカインが微量であり、ELISAによる検出感度に達するためには血清の量が不十分であることが判明した。そのため、少量の血清でも解析が可能となる他の解析方法としてフローサイトメトリーを用いたマルチプレックス法に変更し、次年度試薬キット購入に研究費を充てる予定である。
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