2023 Fiscal Year Research-status Report
廃用性筋萎縮に繋がるミトコンドリア-小胞体連関による新規鉄代謝制御システムの解明
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23K10846
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
内田 貴之 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (00803561)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 鉄代謝 / MAM / 筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では超高齢化社会の到来に伴い、ロコモティブシンドロームの進展がますます大きな問題となっている。研究代表者はこれまでに、ミトコンドリアの機能(エネルギー代謝)異常や鉄代謝異常、および酸化ストレスが筋萎縮を誘導することを明らかにしてきた。これらの因子は相互作用して筋萎縮を誘導すると考えられてきたが、どのように協調して筋萎縮が誘導されるかは不明な点が多かった。そこで研究代表者は本研究課題において、萎縮筋における酸化ストレス・鉄・エネルギー代謝異常の相互作用メカニズムの解明を目指した。 研究代表者は、これらの相互作用メカニズムを中心的に制御する因子として、ミトコンドリア-小胞体関連膜 (MAM)に着目した。MAMは細胞内においてミトコンドリアと小胞体のカルシウム交換輸送や脂質代謝等、広範な生理的機能調節に関与していることが報告されている。さらに近年ではMAMはこれらの調節機能を介して、細胞内のエネルギー代謝制御にも中心的役割を果たすことが明らかになってきた。そこで研究代表者は、本年細胞内鉄量・代謝とMAMの関係性の検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、研究代表者は、筋細胞へ鉄剤または鉄キレート剤を投与した際の細胞内MAM動態についての解析を行った。細胞内MAM動態は、近接ライゲーションアッセイ (PLA)法を用いて評価を行った。PLA法では、抗体によって標識されたたんぱく質が40 nm以内に存在する場合、特異的な蛍光シグナルとして検出できる。本研究では、PLA法を用いてミトコンドリア外膜のたんぱく質VDACと小胞体外膜のたんぱく質IP3Rを標識し、得られる蛍光シグナルをMAM数として計測した。その結果、筋細胞へ鉄キレート剤を投与した際に、MAM数の増加傾向が確認できた。細胞内鉄欠乏はエネルギー代謝の低下を誘導し、MAMの増加はエネルギー代謝の増加と関係しているとの報告がある。そのため、細胞内鉄量の低下がエネルギー代謝低下を誘導し、代償的にMAM数が増加している可能性が考えられる。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、試薬処理によってMAMを増加あるいは減少させた際の細胞内鉄代謝についての検証を行い、MAMを介した鉄制御メカニズムの解明を目指す。さらに、このようなMAMを介した鉄制御がエネルギー代謝に与える影響についても検証を進める予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度で解析を予定していたマウス実験および一部の細胞実験を延期したため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて、関連試薬・費用で使用予定である。
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