2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on the article viewer that prompts human serendipity
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23K11205
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
神場 知成 東洋大学, 情報連携学部, 教授 (10801475)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ソーシャルネットワーキングサービス / セレンディピティ / フィルターバブル / エコーチェンバー |
Outline of Annual Research Achievements |
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のユーザが、自分が読んで心地よい投稿者だけをフォローしたり、さまざまな見解があるようなトピックの検索をしても自分と意見が一致するものだけを読んだりすることで、手に入れる情報や見解の偏りが強まる現象はフィルターバブルやエコーチェンバーと呼ばれ、社会の分断につながるリスクとなっている。 この軽減を目的として、SNS閲覧の際に、表示される投稿者や投稿それぞれが他のものと比較したときにどのような傾向にあるかを対話型ポジショニングマップで表示するSNSビューアを開発した。対象とする投稿はX(Twitter)である。これまでに、対話性に関する被験者評価により、効果の初期確認を行った。 ビューアは、投稿者を指定することによるタイムラインビューと、キーワードを指定することによる検索結果ビューがある。いずれにおいてもポジショニングマップには、投稿者または各投稿の発言傾向(ポジティブ・ネガティブ/主観・客観)や投稿カテゴリーが2次元マップ上のノードとして表示される。マップは、ユーザが記事リスト上でスクロール等の操作をしても、マップ上でクリック操作をしても表示内容が相互に連動する。マップ上のノードのサイズや色は、フォロワー数、いいね数などを反映している他、ユーザの視線を促すためのデザイン上の工夫をしている。投稿の分析はインターネット上の大規模言語モデルのアプリケーション・プログラミング・インタフェース(ChatGPT API)を用いており、ユーザが投稿者や検索キーワードを指定すれば30秒程度で速やかに表示される。 このSNSビューアを用いて11人の被験者(ユーザ)による操作履歴分析を行い、ユーザがSNSを閲覧する際に単に投稿を順番に閲覧するのではなく対話型マップを活用する頻度が高いことなどを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の当初計画は「記事やツイートの収集・分類およびユーザ閲覧情報管理モジュールの開発と、簡易インタラクティブ・ポジショニングマップに基づく少人数参加者を対象とする実験」であったが、この目標は十分に達成した。計画段階で描いていたポジショニングマップは、実装を通じて具体化するとともに初期利用によりユーザビリティの改善ができた。 実装したシステムは、対象とする投稿であるX(Twitter)のAPI利用回数制限、分析に用いるChatGPT APIの利用回数制限から、すぐに一般利用者に公開できるものではないが、あらかじめ登録した限定利用者であれば自然なユーザインタフェースで利用できるものとなっているため、特定した一般ユーザによる評価実験も任意の場所で実施可能である。これによる11人の利用者に対して評価実験を行い、分析結果を学会発表するなど、十分な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目の令和6年度は、当初予定どおりシステムの改良をしながら、本SNSビューアによる利用者の情報アクセス態度の変容を確認する予定である。 現時点では、ユーザビリティ評価によりユーザの積極的な利用を確認した段階だが、フィルターバブルやエコーチェンバーの軽減という本来の目的のためには、ユーザがある程度長時間の利用をすることで、自分と異なる見解の情報を積極的に閲覧するモチベーションが高まったり、異なった視点の情報を多く目にしたりすることができるようになるかが重要となる。 ここまでの開発と評価の過程の中で、ユーザに対して新たな視点を与えるようなポジショニングマップ方法のアイデアも新たに得られており、それらの実装、評価実験と改良をすることでSNSビューアの効果を高める計画である。 さらに、手法および効果の積極的な学会発表など社会的な貢献を進め、研究3年目はそれらをさらに大規模に推進することを目標とする。
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Causes of Carryover |
記事収集分析用PCの金額が当初計画よりもやや安価であったこと(予定35万円→実績19.5万円)などが理由で、今年度使用額が予定よりも少なくなったため。
一方、2年目以降はこれまでの開発物をさらに強化するための一部開発と分析作業の委託費用増加(30万円→約40万円)、当初オンライン参加も想定していた国際学会が対面開催必須となる場合の旅費(30万円程度)など増加可能性があるため、費用削減をしながら計画の順調な遂行を目指す。
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